餌を数時間食べれないだけで死ぬ。日光を数分浴びるだけで死ぬ。大きな音を効くだけで死ぬ。寸胴型の愛らしい姿の「モグラ」は、そんな様々な伝説を持っている。しかしそれは人間に見せる仮初の姿、彼らは地中で血で血を洗う激しい戦いを繰り広げている。
元々日本はアズマモグラが天下を統一していたと考えられている。
しかし2~3万年前にコウベモグラが日本に現れた。恐らくその当時日本列島と地続きだった大陸より渡ってきたのでしょう。そしてその後2万年もかけて、体格が立派なコウベがジワジワとアズマを制圧しているのです。
現在の戦況は、西日本のコウベモグラ、東日本のアズマモグラが主戦場である箱根を挟んで東西で睨み合いの膠着状態となっている。
コウベモグラの東進はココ数百年特に早くなっていると見られる。理由は人間が耕した柔らかい土地を通り道にすることで掘る手間と、耕された豊かな土地になったところは餌が豊富なためだ。交通網と食糧事情の改善により勢い良く勢力の拡大を続けるようになった。
しかし、富士山近辺や箱根周辺は噴火した溶岩によって形成された火山岩の岩盤が硬く、コウベモグラの進出を阻んでいる。つまりアズマが有利な地形へとコウベを誘導し、不利となっていた体格差を巧みに利用して防衛戦を築き、時間を稼いでいるのだ。
ただし岩に阻まれて進みが遅いとはいえ、コウベは年に数百メートルほど北進しており、そのためやがてアズマは滅ぼされてしまうだろう。
一方のアズマモグラもただ滅ぼされるのを待っているわけではない。時間稼ぎを行い反撃の時をまっているのだ。地球の温暖化をだ。
寒い地域だと動物は大型化し、暑い地域では小型化することは進化学上でよく知られている。小型の動物のほうが体温調節で有利なためだ。クーラーのない野生で生きる動物にとってはこれは生死に関わってくる。
アズマは人間による地球温暖化を影から応援し、コウベを一網打尽に出来る日を夢見て今日も必死に戦っている。