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民間刑務所⑪

実録シリーズ!⑪ ー慰問ー【民間刑務所の実態】

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民間刑務所⑪


 センターでは年数回、慰問という行事があった。
 社会で活躍している方がボランティアで芸を披露してくれたりするのだが、バイオリンの合奏している方や、大学生などの演劇、落語などをしている方が多かったように思う。
 決まって免業日の土日が多かったのだが、オレからしたら本を好きなだけ読める日でもあるしその時々でジャンルは違えど何かしらの勉強をしていたので強制参加ではない限り参加したことはなかった。でも印象で言えば参加している受刑者が多かったように思う。どうだったか何回か参加した者に聞いたりもしていたが、楽しかったとかおもしろかったという意見はあまり聞いたことがなかった。普通に社会生活をしていれば触れることがない文化なので経験値として体験していても良かったのかなとは今は思うこともある。
 でも、当時のオレには目指している資格であったりの勉強の方が大事だったし特に後悔はしていない。

 オレの受刑生活で2回だけ強制参加の慰問があった。強制参加の理由は有名人が来るからセンターとしてもカッコつけたいのだと思う。

 一人は元プロボクサーの赤井英和さんだった。ボクシングは詳しくはなかったし赤井さんの現役の試合も見たことはなかったが、ボクシングを見るのはすごく好きだったし、中学生の時に「人間失格」というドラマにも出演されていたのを見ていて赤井さんが好きで見ていた訳ではないが印象に残る役柄だったので興味はあった。強制参加ではなくとも参加していたと思う。
 内容は講話をして頂き、これまでの経験や行き詰ったときにどう過ごしたかという話だったが、赤井さんは世界チャンピオンこそなっていないがタイトルマッチも挑戦しているし新人王も獲得されている方で言葉に重みもあった。
 どこにも溢れている自己啓発みたいな話かもしれないが、何かを成し遂げた人や挑戦した人の言葉には重みも深みもある。世界チャンピオンにもなってないやんとか言う意見もあるかも知れないが赤井さんしか経験できないことであり挑戦できない貴重な体験を千人以上の前で話して輝いていたし、人の気持ちを動かす話をできることは成功者だと思う。
 当たり前のことだが、センターの受刑者は何かしらの罪を犯している。でもその社会から隔離されている集団に対して真面目に話してくれたのだ。
 印象的だった言葉がある。赤井さんが
「みんなこう思ってるやろ? そんなん赤井英和やからできたんやって。そうやねん、オレやから。赤井英和やからできたんや。だって未来を真剣に考えて動いたからな。やらなあかんことをやっただけやで」
 過大解釈かも知れないが、変えれない過去なんか関係ない。変えれる未来を真剣に考えろって言ってもらってるような感覚だった。本当にいい時間だったと思う。

 もう1人は杉良太郎さん。正直この慰問には参加したくなかった。杉さんは刑務所の慰問としては常連の方らしいが、オレの印象はなんか時代劇出てたなあってイメージしかなかった。年配の受刑者は楽しみにしていたが、大半はめんどくさがってた。
 刑務官もめちゃくちゃ気を使っていて、話が終わる度に盛大な拍手を率先してやっていた。
 話の内容は、実の息子さんのことだとか芸能人の慰問行事をしている方とかの話だったと思うが、正直そんなに印象に残る話でも面白い話でもなかったのでほとんど覚えてない。それとご自身の歌を5曲くらい披露されていたが知らない曲ばっかりだったし、もちろん盛り上がってもなかった。杉さんが悪いわけではないし、きっと善意できてくれたのだろうけど、強制参加にしたセンターが悪いのだと思う。
 終わってからアンケートがあったのだが、杉さんは正直な感想を書いてくださいねっておっしゃっていたので「おもしろくなかった」という内容を書いたのだが、後日呼び出しをくらって書き直しをさせられた。千人以上いれば同じように書いた受刑者もいたようでみんな書き直しさせられたらしい。笑

 でも普通に社会生活をしていたら会うことはなかった人だと思うので貴重な体験だったとは思う。


(文・廣島部長)