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民間刑務所⑩

実録シリーズ!⑩ムショの中の大縄跳び大会【民間刑務所の実態】

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 センターではレクレーションの一環としてユニット対抗の大縄跳び大会があった。
 何年目のときか忘れたが同時期に「炎の体育会TV」という番組で大学生アスリートやプロ野球チームの大縄跳び大会で全国大会が開催されていたのを覚えている。同時期だったこともありセンターで過ごす受刑者も注目していた。
 番組では、日本ユニシスバトミントン部が1位で109回。志學館大学レスリング部が2位で75回。広島東洋カープが64回で3位だった。
 ルールは2分間で10人が縄の中に入り、何回跳べるかという単純なものだった。
 センターでも同じルールで縄を回す者が2名で、ユニット代表で12名が選出されて争う。

 信じられないことが起きてしまった。
 なんと上位3位のユニットは全て200回を超えていたのだ。
 1位のユニットはなんと241回だった。番組のと比べると明らかに回すスピードも飛ぶスピードも違う。引っかかればそこでリセットされて1回からになるのだが、番組のはどのチームも1回は引っかかっていた。でもその条件はこちらも同じなのだ。だがどちらにしても、番組の方は1秒間に2回を飛ぶスピードではなかったので200回超えることはなかったと思う。
 刑事収容施設の寄せ集めが全国大会優勝チームに倍以上の差をつけて圧倒したのはおかしかった。
 この年に収容されていたものはみんな同じことを思っていたと思う。
練習時間なども放送されていたし、明らかにセンターの受刑者よりも充実した練習時間が設けられていたし、好きな服装で好きなシューズなどで明らかに条件が良かったはずなのに。センターの練習時間と言えば週4日、各1時間弱という限られた時間しかなかった。
閉ざされた空間なのでもちろんそこに光が当たることはなかったが、こんなことが起こるんだなと誰もが驚きを隠せない出来事であった。

レクレーションは他にも運動会など何個かあるが、決まって受刑者以上に担当刑務官はめちゃくちゃ熱くなっている。きっとなんか刑務官同士で賭けでもしているのだろう。
刑務官は受刑者が中心の生活をしているため、受刑者のためのレクレーションでも自分たちも楽しんでいるのかもしれない。特に島根あさひ社会復帰促進センターは山の中にあって歓楽街も遠いため呑みに行くのもタクシーで30分くらいかかるらしく、その店も客が刑務官しかいないみたいで、そんな場で上司と会うのも嫌だし羽を延ばすこともできないと若い刑務官から聞いたこともある。休みはだいたい釣りに行くかパチンコに行くからしいが、どちらにしても車で30分以上かかるのでだいたい家にいることが多いらしい。

受刑者にとってもレクレーションは単調な生活に刺激があり、いい機会にはなる。もちろん記録などは自己満足だし、大した景品が出るわけでもないが参加している者はみな熱くなり刺激的な時間を過ごしている。社会生活でも同じかも知れないが、同じ目標に向かってみんなで進むというのは思っている以上に連帯感や仲間意識が強くなるものだ。

こうして思い出してみると本当にしょうもないし誰に誇れることでもなく、ただただ微笑ましいだけの思い出である。
ちなみにこの年の大縄跳び大会ではオレのユニットは226回で2位だった。景品も12名だけがボールペンだかなんだかをもらえただけだったので、本当に熱くなる価値もない催し事だった。
ただ当時はなんで熱くなったのかわからないくらい練習もしたし、受刑者同士でケンカ寸前の言い合いにもなったのを覚えている。

センターでは慰問も年間何回かあったが、大型刑務所みたいにそんなに有名人が来たことはない。それにほとんどが参加自由だったので本を読むか勉強していて強制参加の慰問しか参加していないが、またの機会に慰問のことも話してみたいと思う。


(文・廣島部長)