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民間刑務所⑨

実録シリーズ!⑨ムショの中の食生活【民間刑務所の実態】

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 島根あさひ社会復帰促進センターでも年末年始の行事はあった。
 というか、刑事収容施設では娑婆以上に日本の行事に関してはきちんとしているらしい。
 食事は普段の麦飯から白米になるのだが、白米を見慣れない生活になるため
「え?こんなに白かったっけ?」
となる。
 御節料理も食事とは別に元旦に配布され、居室に持って帰って3日までに食べ終わればよかったし、大みそかには紅白も最後まで見れた。
 もちろん世間と同じ年末年始の大型連休なので作業もなく、特番などを見てるか映画を見てるかホールで過ごすかであった。オレはそんなに普段からテレビをがっつり見ているわけでもなかったし、その時々で勉強していることがあったりしたのでほとんど見ることはなかった。あと、テレビを見ているより本を読む方が面白かったので、正月も変わらずそんな生活だったようにも思う。
 お菓子も支給され、人気があったのは「半生かりんとうドーナツ」というお菓子だった。年末が近づくにつれ、そのお菓子を賭けて将棋などで勝負が多くなっていた。
 もちろんそんなことは懲罰対象のため、チンコロ(密告)もあったため、バレて懲罰に行く人間も少なくはなかったように思う。
 この時期に懲罰にいった人間は最悪だったと思う。年末年始はテレビも見れず、与えられた余暇時間にみんなと話すこともできないのだから。
 でもどちらかというと、オレはあんまり年末年始などの大型連休は好きではなかったかな。作業している方が時間が過ぎるのも早いし、ユニットから出ることがなかったため運動で走ったり筋トレしたりすることができなかったからだ。休みの間は差し入れも面会もストップにもなることも気持ち的には大きかったように思う。本を読むのが好きなのでその時間が多いのは良かった。
 あと雪の量がすごかったのも印象的だった。スキー場以外であんなに雪が積もるのは見たことがなかった。冗談抜きで窓から触れそうなくらいに積もっていたので1メートルは積もっていたのではないかと思う。寒いのは寒いが、冷暖房完備だったので耐えられないことはなかった。
 それを見ながら、娑婆での楽しかった正月のことを思い出したり、外にいたらあんなことできるのになあって思って、自分が置かれている状況を恨んだりも
した。自業自得なんだが。

 悪いことばかりでもないのは、年賀状が届いたときに思った。
意外な人から年賀状が届いたりすると「忘れられていないんだなあ」とか「気にしてくれているんだなあ」としみじみ感じて、よし頑張るぞ!って気持ちにも改めてなれる。
 あと嬉しかったのは、入浴が決まった曜日しかなかったのだが、三が日は全部入浴の時間があった。しかも柚子が浮かんでおり、なんとも言えないいい香りに浴室が包まれており、いつもとは違った気持ちで入浴が楽しめた。
 外に居たら何でもない出来事が、刑事収容施設にいると幸せに感じる。この感覚は今でも大事な感性だと思っている。
 特に2019年の正月は出所日も自分では分かっていたし、センターで過ごす最後の正月なので考えることが多かったように思う。一般ユニットで過ごしたのも2019年の正月だけであった。他は全部職業訓練ユニットだった。
寂しいとかの感情は全くなかったが、出所後の生活がどうなるかのか。自分の思い描いた通りになるのか。色んな人が受け入れてくれるのか。世間のスピードについていけるのか。家族との関係改善など、色んな事が想像できないし見えなさすぎる未来をずっと考えていたように思う。不安とは違う、何とも説明し難い微妙な感情であった。
後は、出所したらあそこに遊びに行きたいなだとか、あの店にあれを食べに行きたいななども考えたりはしていたが、出所後はそんなことも忘れていて全然実行していない。

でもやはり、被害者感情も考えず自分勝手ではあるかも知れないけれど出所が楽しみで仕方なかった。全員とは言わないが、それがほとんどの受刑者の正直な思いだと思う。


(文・廣島部長)