こんなにも毎晩浴びるほど酒を飲むのは初めてかもしれない。どれだけ飲んでも酔えないし、眠れない日々が続く。それが人の死に接するということだろう。ただ彼に思うことがある。もう誰に警戒することも感情を熱くさせることもない。これまで築き上げてきたものを下ろして楽、にして欲しいと。もうゆっくりして欲しいと...。
彼はどこで会っても警戒心を働かせていた。ただどこまでも精神力が強かったのは、それを口に出すようなことは意地でもしなかった。
私はどこにいても何をしてても変わらない。
それは今も昔もだ。言いたいことをいうし、感情的になれば我慢がきかない。それで是非を考えないようにしている。
自分の正しいことを正しいと言えず窮屈に暮らして生きていくらいなら、自分の感情に正直に生き、それで後悔するほうがまだマシだと考えている。
それでも私は彼のようにタフではない。内心はいつも自問自答を繰り返していた。私の生き方は本当に正しいのかといつも、心の中では考えていた。だが、彼は私に教えてくれた。
最期の最期に私を頼ってくれたのだ。精神状態が究極な限界にきても、私のことは信用してくれていたのだ。
私の生き方が正しいか正しくないかなんて分からない。だけど、たった1人でも死に直面した状況で、最期に信頼してくれたのが私だったのだ。
迷いはこの先も続くだろう。だけど、私は私のままで決して妥協せずに生きていこうと思いを新たにしたのだった。
「このまま突っ走ってください!」
いつも彼が私に言ってくれていた言葉だ。
彼はもともとタバコも吸わない。酒も辞めていた頃は、とにかく食生活においても健康管理に神経質なくらい気を配っていた。そんな彼に尋ねたことがあった。何が今1番楽しいのかと。多分2年くらい前だったと思う。
「朝にジムに行ってからスーパーに行き、刺身を買って1人で食べることですかね」
そう言うと悪戯っ子のように、はにかんでみせた。もし酒を飲めるなら、どんなシチュエーションが1番良いかとお互いに禁酒している時に、雑談したこともあった。
「3パターンあるんですよ。一つは、行きつけの寿司屋で昼間から寿司をつまみに日本酒を延々飲むこと。それから昼間からバーベキューでなんでも良いから酒を飲み続けること。三つ目は部屋の中で好きなことをしながら、ウイスキーを飲むこと。この3パターンをやりたいですね〜」
そんな話をするときは、いつだって悪戯っ子のようにはにかんでみせた。
世間の彼に対する評価は分からない。少なくとも私は興味がなかった。私は私に見せる表情、そして言葉が全てであった。
どれだけ時代が変わっても、人間関係とはそういうものではないだろうか。
私は彼に私の周囲の信頼できる人たちを全て紹介してきた。そして彼の人脈も果てしなかった。
数ヶ月前から、Twitterに彼が頻繁に投稿し始め、「客観的に見ていてどう思われますか?」と私もそして親友の猫組長も彼から意見を求められることがあった。猫組長は私なんかよりも考えがもっと大人だった。
「あんまり熱を入れないんでいいんじゃない〜」
というスタンスだった。私はSNSに対する嫌悪感があるので、そこには重心がない。だからSNSなんてそこまで気にすることがないんじゃないかというスタンスだった。
ただ、何度も猫組長とは彼が発信するSNSの投稿については、2人で心配はしていた。彼の心の変貌ぶりをだ。
少なくともそれまでの彼の性格から考えて、建設的ではないことに力を入れるタイプではなかった。
「ネットなんて全く興味がないですね〜」
と口にしていたくらいだったからだ。
彼の中で精神的に様々な変化があったのだった。
最近ではドラマの影響で、色々なところで話題となったり、連絡がきたりするようになった。
ただ私は何も変わらない。ここまで来たのだ。
私は人の顔色で何かをかえたり、心だけは折らない。彼のためにもーと大それたことを言える人間ではないが、彼というタフな友がいたことを私は忘れない。
随分と寒くなってきた。今年の冬は冷え込みそうだ...。
ーもうクリスマスに正月やって。一年てほんまにあっという間やでな。兄弟にもしらせてきたよ。強い男やから、ずっと涙を堪えてこぼさんかった。オレはこんなんやん。でも人前では絶対に泣かんて決めてるから、泣かへんかったけど、1人になったら子供みたいにわんわん泣いてもうたでな。
見上げたら、あなたがいるといつも思っています。どうか安らかに。
友へ。
沖田臥竜拝 ー
(文・沖田臥竜)