>  > ■ドラマ「ムショぼけ」 ー最終回(12月12日)ーまでの特別スペシャル!!! 真夏の星屑【リサ編】②
真夏の星屑【リサ編】②

■ドラマ「ムショぼけ」 ー最終回(12月12日)ーまでの特別スペシャル!!! 真夏の星屑【リサ編】②

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◯ 佐々木リサ

海辺、夜空の星屑を見上げるリサ。潮風が頬を刺す。なぜ、尼崎に来てしまったのだろうか。最後にどうしても、陣内とナツキに会いたくなった。ただ、最後に2人と一緒に過ごした思い出を胸に抱いて、天国へと旅立ちたかった。どこかで2人もこの星屑を見上げているだろうか。

海辺近くのカフェ。広々とした4人掛けの席に腰を沈めたリサ。ビトンのバックから、スマートフォンを取り出し、何気なくTwitterをタップする。トレンドをスライドさせると、リサの名前が目に入った。

うんざりだった。リサは瞼を閉じて首を振り、Twitterの画面を遮断させた。もうどうでも良いことだ。

「あれっ!ヤバ!あのサングラスて、リサじゃねえ?」

「はっ?ウソまじで⁈こんなところにリサなんているわけないやんて、ヤバ!リサじゃん!」

近くの席から声が聞こえる。リサは瞼を開けてサングラスをズラす。

「いえ〜い!リサだよん!!イエ〜イ!」

歓喜の声を出す周囲の客たち。それにいちいち手を振りながら、席を立った。海風に乗って聞こえてくる声。

「リサって今バリバリ叩かれてるけど、めっちゃええヤツやん」

「...黙れ、クソが...」

と口の中で吐き捨てた後、リサは笑みを溢した。

ー黙れ!クソが!何べんおんなじこと言うたら分かるんじゃ!短いスカートはくなゆうたら、はくな!!!クソが!ー

父はいつもリサを見ては、服装や髪型について口悪く怒鳴りつけてきた。

「うるさいな!もう!パパの関西弁ゲロきもっ」

ー黙れ!クソが!ー

それが、父の口癖だった。唯一、リサを何の遠慮も躊躇いも見せずに、叱り飛ばしてくれる存在。そんな父ももういない。今ではリサを叱りつける人間なんていなかった。変わりに、匿名性が守られているネットで、リサは叩かれ続けていた。うんざりだった。もう全てがうんざりだった。

それを真正面から怒鳴りつけてきたのが、宗介だった。刑務所帰り。HIROと弟のナリキン社長と行った喫茶店。怒鳴りつける宗介が父を彷彿させた。父が今も生きていたら、ー黙れ!クソが!ーと言いながら、何からも守ってくれただろう。

前方から視線を感じ、目を上げた。高校生だろうか。ブレザーの制服を着崩し、軽く刈られたハーフモヒカンが金髪に染められている。だるそうに歩きながら、こちらに近づいてくる。

「何みとんねん?」

リサは頭を金槌で殴られたかのような衝撃を受けた。まただ。尼崎と言う街はTVやインターネットが通っていないのか。都内ではあり得なかった。

ーあれっ!!!!も、も、もしかして!!!リサさんですかっ!!!すげえ!マジで!!!オレ!ファンなんすよ!!!ー

視線が重なった時、そう言われると思っていた。だけど、全く違ったリアクション。

「はあ?」

サングラスをずらして見せた。これで金髪少年の態度も豹変するはずだ。

「はあ?とちゃうわい。さっきから、オバハン、何をジロジロと見とんねん。身体目当てやったらヨソ行けよ」

どこか聞き覚えのあるイントネーションと雰囲気。父か。いや少し違う。

「オバハン?あんたね!あたし誰だかしってんの?あのリサよ!り、さ!!!誰がオバハンよ!!!なんであんたみたいな子供に発情すんのよ?バッカじゃない!」

「誰が自己紹介せえ言うとんねん?もうええもうええ、帰れ帰れ」

うっとしそうにシッシと手を振りながら、立ち去ろうとする金髪。その仕草を見て、思い出した。宗介だ。宗介に似てるのだ。背を向けて歩き出した背中を思わず呼び止めるリサ。

「陣内...くん...」

「は?お前なんで、オレの名前知って、、、て、うわっ!やめんかいっ!何で抱きつくねん!!!離せやっ!!!」

思わず抱きしめていた。

「キャアアアッッッ!!!陣内ジュニア!!!!」

「やめろ!離せって!何やねん!お前!!!こらっ!!!腕組むな!!!何してんねん!離せって!」

「いいじゃん!いいじゃん!最高じゃん!!!ねえねえねえ!!!どこ行くのよ⁈ねえねえ⁈」

腕を組み金髪の顔を覗き込む。

「どこって、オバハンに関係ないやんけ、電車に乗って家に帰るんじゃ」

言いながら、ズボンのポケットから金髪がくちゃくちゃのタバコを取り出し、器用に片手で一本抜きとると口に咥える。銘柄はセブンスター。宗介と同じだった。

「あんた最高じゃん!チュウしたろ!!!チュウ!」

「や、や、やめんかい!!!きたな!何してんねん!」

宗介に贈る曲は、セブンスターに決めた。

「尼崎って最高じゃん!あんたいいよ!!!アマ

最高じゃん!!!」

間違いない。宗介の息子だ。リサは確信したのだった。嫌がる金髪の腕を組み、リサは駅まで金髪と歩いていったのだった。

◯陣内カイト

家にかえるカイト。リビングでナツキがテレビを見ている。その画面を観て絶句する。

「あっ!!!こ、こ、こいつや!!!」

振り返るナツキ。

「何よ!カイ?あんたリサちゃんのファンなん?」

何故かニタニタしながらナツキがカイトを観ている。

「そんなんとちゃうわい」

アイツはリサと言う芸能人だったのか。全く知らなかった。

「ナツキ、そいつって有名なんかい?」

「超、有名っ!カイ、ここだけの話し、姉ちゃんが紹介してあげよっか?」

なぜナツキが嬉しそうな顔をしているのか。カイトには全く分からなかった。

「お前な、そういうなんて言うか、だらしないとこオヤジにそっくりやの。実家ばっかり帰ってこんと、はよ自分の家に帰れ」

そう言うと、カイトは自分の部屋へと向かっていったのだった。

◯佐々木リサ

カフェでiPhoneをタップするナツキ。宗介の文字をタップする。電話の向こうから聞こえてくる宗介の声。

「宗介!ラブミー!今、尼崎にいてんだけどさ、仕事終わったら、カフェでもどう?リサね〜ローカルの尼崎で、お洒落なカフェを見つけちゃてね。宗介まだムショぼけってのにかかってんでしょ。リハビリついでにリサとお茶しよっ」

リサの顔から笑顔が溢れていたのだった。

END

(文・沖田臥竜)
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