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役者人生12年!ドラマ「ムショぼけ」(ABC放送)に賭ける想いー文・沖田臥竜

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(リード)一部地域を除き深夜帯のローカルドラマのはずなのにゴールデンにも張り合いを見せようとしているドラマが存在する。それが毎週日曜日に朝日放送で放送されているドラマ「ムショぼけ」だ。そのドラマに人生を賭けた俳優を、原作者の沖田臥竜が語るー。

言うならば、ドラマ「ムショぼけ」は学芸会だ。誰がすごいとかの概念を全てとっぱらい、オレがやらなければ、わたしがやらなければ、誰がやるのだ、とみんなで作り上げてきた学芸会だ。そして時に、その学芸会の熱量こそが世論を巻き起こし、全国へと突き刺すことがあるのである。

世の中にドラマはたくさんあって、これからも数多くの名作がまた誕生していくだろう。

だが、心に刻まれ何十年と語り継がれるドラマはそうそうないのではないだろうか。

そんな想いの中で、私はペンを走らせたのであったー

映画「ヤクザと家族The Family」(藤井道人監督作品)で監修を務めた際、私は所作指導も務めている。まさか私が人生で舘ひろしさんや綾野剛さんに所作指導をすることがあるなんて想像もしていなかったが、そのときに出会ったのがドラマ「ムショぼけ」で主演を務めてくれている北村有起哉さん。他に市原隼人さんらであった。求められたシーンで私は「これはこうです、こうした方が良いと思います、ではこれはどうでしょうか」とお芝居に対して伝えさせていただいたのだが、芸能界の最前線に立つ人々の呑み込みの早さには、実際、度肝を抜くほどであった。

吸収力のスピード感が半端ではなかったのだ。だが、それだけじゃなかった。名前すら全国に知れ渡っていない俳優の人々もそれは同じだったのだ。

その中の1人が、現在ドラマ「ムショぼけ」でシゲ役を演じている藤井陽人であった。

当時、彼は重岡佑一郎という芸名で活動しており、そのため現場では藤井道人監督を始め「シゲ」の愛称で親しまれていたのだった。

当時で芸歴10年目だった彼のことを私は知らなかったし、世間の知名度から考えてもそれは同様だったと思う。

芸能界というところは、モンスターと呼ばれる俳優が大勢頂点に君臨しており、文字通りの弱肉強食の世界だ。少し売れたくらいでは人々の記憶からは直ぐに消え失せ、演じることを辞めてしまえば、結果としては何も残らない。だからこそ、芸能人という職業は特別なのだろう。

私自身、TVの向こう側は特別な世界であった。人々の記憶に残り続ける人々。私では到底、真似できない職業だ。仮にもし私が俳優を志していたならば、初めての現場で廃業していたはずだ。

だが、彼は10年続けていたのだ。未来に何の保証すらない中で、俳優という職業を10年続けていたのである。時折でも世間から脚光を浴びることが出来ていたのであれば、職業として役者を続けることは決して困難ではないだろう。だが、脚光を浴びることなく、世間からも認知すらされることなく、続けるということは、並大抵のことではない。それは私自身が書くという仕事で経験していたことであった。

彼が言った言葉で忘れられない言葉がある。

ーS級の主演を目指さなくなれば、役者を辞めますよー

S級とは業界でいう誰もが知るトップクラスの俳優のことで、彼は底辺から頂きを見ていたのだ。

バカだけで世間知らずだけで、好きだけで、その気持ちを折らずに持続することはできない。彼には彼なりの意地や想いがそこにあったのだ。

彼は亡き父の名を世に残していこうと芸名として「重岡佑一郎」で活動していたのだ。

「だけどもう継なぐことはできないっすかね...」

ある日、彼が私に言ってきたのだった。私は答えた。

「シゲ...名も人間も一代やぞ」

それは私自身が自らに言い聞かせていることだった。私の人生は人に誇れることばかりではない。私の重荷は自分自身で背負い続け、あの世に持っていくと決めている。だから名も人間も一代と決めていた。そのかわり私は私で唯一無二でなくてはならないと思っている。

そこからであった。シゲが芸名を本名に戻し、藤井陽人にかえたのは、そこからであった。

ドラマ「ムショぼけ」のシゲ役は、初めから彼を決め打ちで書いていた。自分自身の人生を自分で変えることはなかなかできないが、人の人生を変えれる瞬間というのが私の仕事にはあって、私はドラマ「ムショぼけ」で、彼の役者人生を変えようと考えたのだった。

キャスティング会議で、シゲ役はメインキャストだった為に、彼には重すぎると、見事なくらい全員に私は何度も反対された。代案として、彼にはもう少し違う立ち位置でお芝居させ、シゲ役には、映画などでも主演を務めた経験もある俳優が浮上していた。それでも何度もキャスティング部と話し合い、最終的に一番これまで彼のお芝居を見てきた藤井道人監督が根負けしてくれたのだった。

「原作者の沖田さんがそう言うんだから、原作者の意見を尊重しよう」

この一言で、藤井陽人がメインキャストに抜擢されたのであった。

ドラマを観て、シゲが視聴者の記憶に残るかは分からない。だが少なくともいい。

ーあのシゲ役の役者は誰なん。良かったやんー

と誰かの心に刻まれれば、純粋に私も嬉しく思う...。

だが...そんな私の気持ちなど微塵も知らず、用事があったので、彼にLINEを入れると昼過ぎだというのに既読がつかない。朝はLINEがきていたというのにだ。どうやら彼は二度寝をしているようである。

こういう時のために生まれた言葉が、トホホ...である。

(文・沖田臥竜)

【藤井陽人出演作品】

朝日放送ドラマ「ムショぼけ」 映画「ヤクザと家族The Family」映画「ANOTHER GANTZ」「闇金ウシジマくん」「グラスホッパー」「俺物語!!」、フジテレビ「GOLD」、TBS「3年B組 金八先生 ファイナル」、NHK BSプレミアム「クロスロード」などに出演。GREE神獄のヴァルハラゲートのCMや、ファミリーマートのスチールに起用される。G-glabプロダクション所属。特技はヒップホップダンス。

小説「ムショぼけ」(小学館文庫)は各書店及びAmazonにて好評発売中

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