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音訳科【後編】

実録シリーズ!⑥ムショの中の音訳科⁈(後編)【民間刑務所の実態】

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音訳科【後編】


 残りの半年の音訳科が新しい後輩訓練生30名と共にスタートした。
 ここで結構オラオラなキャラの奴が入ってきた。年齢は確か3個くらい上で東京出身だった。名前は憶えていない。オラオラ君でいいか。
 正直めんどくさそうな奴だなあって印象だったのであんまり関わらないようにして半年無事に過ごそうというのが本音だった。
 だが、そう思ってる奴に限って関わってくる、、、
 
 しかし害はなかった。どちらかと言うと仲良くして欲しいみたい空気を出しながら近づいてきたのだ。
 それでも他の奴はガンガンに詰められていた。オレに害がない分には勝手にやらせていたのだが、そいつの弾けようはエスカレートしていった。みんな上がっていくしユニットの人数も結構なペースで減っていった。
 音訳科にも支障が出てきて、納品のペースがギリギリになっていった。
 そんなある日、オヤジが
「廣島、あいつどうにかしてくれやー!」
と、言ってきた。オレは
「は?オヤジ何ゆうてるんすか?オレにあいつと揉めさせようとしてるん??」
担当「いや、そうじゃないよ。あいつお前の同期訓練生とか使って色々オレにも言ってくるんだよ」
廣島「は?まじで??」
 それは確かに放置できない。
と、いうのも最初に話した時に
「結構暴れまわると思うんですが目をつぶってもらえますか?」
と言ってきたので
「オレらはオレらで過ごしやすいユニット作ってきたし害がないようにしてな。あとオレらの同期と揉めたりするなら話聞くから言ってきて。オヤジに何か言うにしても一回話聞かせて。」
というようにある意味、平和協定みたいなのがあったのだ。
 早速動いた。
「あのさ、最初に決めたことと話違うくね?なんかごちゃごちゃやってるのも全部知ってるで。どうなってるん?」
オラオラの答えは
「いや、廣島君にケンカ売ってるつもりじゃないよ。」
という返事だった。
そのオラオラは誰かをツメてるときによく
「ここ、刑務所だぞ?わかってんのか?」
と聞こえてきてた。島根事態に来たのも、まだオラオラは半年足らずだったのにだ。しかも初犯刑務所なのにまるで懲役の全てを知ってるような口ぶりに、オレは笑いを我慢していた。
 そして言ってやった!
「あのさオラオラくん。ここ刑務所やで?わかってるか?あんまり目につくようだとこっちも黙っとれんでな。」
 正直ケンカになったらなったで仕方ないと思ってたし、ある程度の覚悟は持ってオラオラに言った。すると返ってきた答えは
「はい、嫌な思いさせてすみませんでした。気を付けます。」
だった。
 もっと何か揉めると思ってたけど正直拍子抜けだった。向かってくる奴には案外こんなんなんや。と思った。ただの弱い者いじめしかできない奴。嫌いなタイプ。
 あと2カ月で音訳科を卒業だったのだが、
「そんなタイプの奴嫌いやし、顔見ただけで殴りたくなるからオレらが卒業するまで余暇時間もホールに出てこんといてくれるか?それが嫌なら上がっていいで。」
「わかりました。」
と、案外あっさり解決してしまったのだ。
 ユニットのみんなからは称賛の嵐でちょっとしたヒーローになってしまった。
 オヤジもよくやったと言わんばかりの優遇だったが、内心ケンカしてどっちも上がれと思っていたのかもしれない。このタヌキめ!!
 オラオラとツルんでいた同期訓練生も、
「あいつには嫌気がさしてたんです。言ってもらってありがとうございます。」
となり、オラオラは音訳科で孤立したのである。
 どこからこんな話が漏れるのかわからないが、色んなユニットにこの話がねじれ曲がって広がり、逆に
「廣島ってやべー奴や!めんどくさそうやから怒らせんようにしとこ!」
となったのである。でも結果的に、その後の受刑生活も色んなトラブルには巻き込まれずに過ごせたからよかったのかもしれない。

オレは結構職業訓練に積極的に応募していたため、転々とユニットを移っていたので1年間同じユニットで過ごしたのは初めてだった。
長く過ごしたので、出所後の今でも慕ってくれるいい関係の人もいる。

あ、オラオラくんはオレが音訳卒業してから、同期訓練生に上がらされたらしいです。


(文・廣島部長)