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新入考査

実録シリーズ!②それでも新入考査は地獄⁈【民間刑務所の実態】

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新入考査

 島根あさひ社会復帰促進センターにバスが到着し、まずは着ている服を全部脱ぐように指示をされシャワーを浴びた。
そして出所まで刑務所に預けておく服や私物(スマホや財布など)と持ち込めるものに荷物を分けられ、職員と一つ一つを確認しながら指印を押していく。ここまでは留置場と拘置所も同じ流れだったので戸惑うこともなかった。そして考査期間と呼ばれるユニットに連れていかれる。ワクワクはそこまでだった。

 ユニットの扉が開いた瞬間、刑務官の怒声が響いた。

「お前、声が小さいんじゃ!!!!お前のせいでみんなやり直しじゃ!!!!」

(え?なになになになに??)

 連れてきた職員の顔を見ると刑務官が「明日から始まる訓練じゃけ、見学しとけ」と言われいきなり「気を付けーーーー!休め!!」っと大声を出してきた。
そしてまた息をつく間もなく
「気を付けーーーー!番号!」とオレの顔を見てきた。
は?番号?とか思いながらも、頭はパニック状態で「いちーーーー!」と叫んだ。
するとバスで一緒だった受刑者がちょっと吹き出しながら「に!!!!」ぶはっ!となった。

「なにがおかしいんじゃ!!!番号!」

オレ「いち!」 

もう一人「に!!!」

刑務官「声が小さい!番号!」

「いち!」

「に!」・・・

 これを何十回繰り返しただろう。
とにかく「に!」の奴が声が小さいのだ!。
本で見たことあったが、刑務官は脱走やトラブルに備えて仕事中は神経をピリピリさせている。
だから少しでも移動するたびに番号をとることが癖づいている、と書いてあったのを思い出した。

 でも直立のまま移動もしていなければ、人数はどう考えても2人やんけ!!!何回やんねん!見たらわかるやろ!!!と思っていたら、オレまで笑いが込み上げてきて我慢するのに必死だった。

何十回も同じことをやった後にようやく「休め!」がかかった。

 そうすると初めの怒声を上げていた刑務官が「まわれーーーみぎぃ!!」

「みぎむけーーーーみぎぃ!」

「ひだりむけーーーひだりぃ!!」

とランダムに叫んでいる。数日前に入所した受刑者約20人弱が、ずっと揃って動いている。
本でもこの行動訓練は知識としてあったのだが、実際に目の当たりにすると、想像よりも遥かに厳しそうに感じた。
 他の刑務所でもここら辺は同じなのかなと思う。

 ただ最初の二週間は毎日これで、1時間の運動時間もほぼ行動訓練で潰れた。
そして食事などは、例の開けたホールで食べるのだが、その他の時間は居室に居て、入所の心得みたいなものを何十回も読まされた。
運動時間内の最後の5分くらいしか他の受刑者と話す時間はなく、かなり心が折れた。
のちに一般ユニットが、あんなにも自由とはこの時はまだ知らなかったので、この生活が5年弱続くと思い、心身ともに弱っていくのに十分すぎる時間であった。

 聞いてたよりめっちゃ厳しいやん!!!!!

 数えきれないくらい繰り返し心で叫んだ。

 そして長かった二週間が終わり、一般工場に配属される日がきた。例の考査担当の刑務官に

「お前らぁあ!!こんなんで一般ユニットで通じるとおもうなよぉぉぉぉおお!!!」

 と、何度も怒鳴りつけられていたので、一般工場の刑務官はめちゃくちゃ厳しいと思っていた。憂鬱で仕方なかった。

一人づつ名前を呼ばれて、大量の荷物を持って配属先まで連れていく刑務官と一緒にユニットを出ていく。そしてまた連れて行った刑務官が戻ってきて次の受刑者を連れていく。その繰り返しでオレが呼ばれたのは10時くらいだったろうか。
キャリーケースいっぱいの荷物を引っ張りながら、刑務官に付いて行った。道中で刑務官が話しかけてきた。

「いい工場で良かったな。頑張れよ。」

 と、笑顔で言ってくれた。

 ーえ?この刑務官、優しくね??笑顔で話してくれるんや!入所ユニットの刑務官なんやってんあれ??キャンキャン吠えたいだけの変態やんけ!!ー

という怒りと同時に、拍子抜けした気持ちもあった。。

 工場の扉を開けると、そこは洗濯工場だった。

 この日から民間刑務所の甘さを実感していくのであった。

 まだ日差しの強い夏の日だった。


(文・廣島部長)