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エッセイ『10年前の君へ』 文・沖田臥竜

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『10年前のオレへ』

以前から薄々、気がついていたのだが、最近、間違いないと確信したことがある。

ーオレは仕事しかしていないー

起きた瞬間から寝る瞬間まで、ずっと働いているのである。
それがいつしか当たり前になってしまい、休日という概念すら喪失してしまっているのだ。末恐ろしいことである。

一応、気持ち的には、これが終われば休もう、これを乗り越えたらゆっくりしようと思ってはいるのだが、働けば働くだけ仕事量が増え、終わりがないのだ。

考えてみろ。月の連載だけで10本あるのだぞ。そこに夏前に発売する新刊。秋に発売する小説。何だったら来年、もしくは再来年に発売する小説もあるのだ。

ど・こ・で・や・す・め・る・の・だ...。

しかもそれだけではない。
今は映像の仕事にも携わっているので、何だってやっている。
現在、携わっている映像の仕事だけでも、いつから入ったのかえさえもう忘れてしまったハリウッドドラマ。TVのドキュメン。金字塔狙いのTVドラマ。秋からの映画。来年の映画...仕事がクセになりそうで怖い...。

お陰さまで、流石にこれだけ働くとどうなるか。単純である。金銭的な心配をすることがなくなるのである。当たり前ではないか。これだけ働いているのに、電気代の節約まで気を回せるか。2ヶ月に一回必ずやってくる水道代に、びくついていられるか。
ただふと違う不安が脳裏を掠めてくるのだ。

ー嗚呼、残念なことに、もしかしてオレは、もう働くことしか出来ない身体になってしまったのではないか...ー

と。のほほんと日がなやっているクセに「なんなんすか!忙しいんすよ!」と言うアキトや、常に3時間後にしか折り返してこないヒロなんかを見ていると、つくづくそう感じるのである。

呑気は罪なほどに羨ましい。

あれだけ愛したセブンスターも辞めてしまった。やりたい趣味もなく、欲しいものさえ今はない。会社経営にまで手を染めてしまい、職業欄のあんな小さなマスでは、とてもじゃないが、今のオレの職業は埋めきれない。

仕方なしにしぶしぶ「作家」とだけ書いている。


(文・沖田臥竜)