>  > 猫組長がR-ZONEに緊急寄稿!藤井道人監督 映画「ヤクザと家族」を大絶賛!

猫組長がR-ZONEに緊急寄稿!藤井道人監督 映画「ヤクザと家族」を大絶賛!

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

image1.jpeg 久しぶりに映画館へ足を運んだ。ボヘミアン・ラプソディ以来だから、かれこれ2年ぶりだ。その前がラ・ラ・ランドだったから、この4年間で2度しか映画館へ行っていない事になる。
 ネットによるストリーミング配信が盛んになってから、映画は自宅で好きな時に観るものという感覚だ。そして、私はほとんど邦画を観ない。ましてやヤクザ映画など観る気もしない。
 「ヤクザと家族 The Family」
タイトルだけで私の興味は湧かなかった。それでも、親友の沖田臥龍が監修・出演しているということで観に行ったのである。ありふれたヤクザ映画という先入観から、正直言ってあまり期待していなかった。
 ところが、ヤクザが主人公であるものの、この物語はこれまでのヤクザ映画とは全く違うのだ。まるで絶望の淵を覗き込むような深く悲しい人間ドラマであった。そして映像の美しさがその悲劇を煽り立てるのだ。カメラの振れさえ計算された表現方法なのだろう。藤井道人監督の感性とリアリティを追求する姿勢にはただただ脱帽である。
 物語は最初から最後まで重く息苦しさを感じるほどだ。派手な抗争シーンこそあるがそれは写実的な描写で、ヤクザ映画特有のヒロイズムは微塵も感じられなかった。
 暴力団排除条例は文字どおり社会からヤクザを排除するのが目的だ。そしてそれは十分に機能している。それどころか、予想以上の効果を発揮するようになった。当事者のヤクザだけでなく、その家族まで社会から排除してしまうほどだ。
 ヤクザが反社会的勢力と正式に定義付けられたのは2007年のことである。以来、ヤクザは社会から排除される対象となった。必要悪として生きながらえてきたヤクザはその存在を完全に否定されたのである。
 現在のヤクザは携帯電話の契約も銀行口座の開設もできない。クレジットカードも作れなければ住む家も借りられない。シノギどころか生きていくことも儘ならないのである。その結果、ヤクザは弱体化の一途をたどり、不良階層のパワーバランスが大きく変わったのだ。
 戦後の混乱期に近代のヤクザは誕生した。その後、高度経済成長期を背景にヤクザは経済力を身に付け組織は拡大していく。そして、時代は昭和から平成へと変わり、バブル経済の終焉とともにヤクザは冬の時代を迎えるのだ。
 バブル崩壊と時を同じくして暴力団対策法が施行されたことも、ヤクザをさらに追い詰める一因となった。それでも、ヤクザは環境の変化に対応しながら生き残ってきたのだ。
 だが、それも暴力団排除条例で限界を迎える。弱体化したヤクザはガバナンス不全となり内部崩壊を始めたのだ。山口組の分裂がその最も象徴的な出来事である。
 ヤクザの基礎をなすのが「家族」という集団・共同体の概念である。もちろん、血縁関係の無い擬似家族ということだ。だからヤクザは家族という絆を確認するために盃という儀式を行うのである。
 「ヤクザと家族 The Family」はその名のとおり、家族とは何かという問いにヤクザを通して答えた作品である。昭和から平成にかけて、変わりゆく暴力の置き場所と変遷を見事に描いている。
 主人公を演じる綾野剛の演技も素晴らしい。躍動感溢れる暴力性と、時代に取り残された悲しきヤクザをリアルに演じ切っている。
 この作品は間違いなくヤクザ映画の新しいベンチマークとなるだろう。
 

(文・猫組長)