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映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』

茜いろの日々 ー映画ー『宇宙でいちばんあかるい屋根』

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◯映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』


主演の清原果耶さん演じる『大石つばめ』を見ていると、思わずもう一度、高校生の頃に戻りたくなってしまった、、、すまぬ。高校へは進学していなかった、、、。

小さな頃から映画館が好きだった。私の地元、兵庫県尼崎市の塚口には映画館があったので、映画は私にとって身近な存在だった。
それは大人になってからも続き、今でこそ1人でどこでも出掛ける事ができるようになったのだが、昔は1人で行ける場所と言えば、コンビニとパチンコ屋。それに映画館くらいしかなかった。

年々、仕事に忙殺され、それに比例して様々な葛藤や悩みが人並みに生まれるようになったのだが、そんな時、私はいつも1人で映画館へと向かった。そこで煩悩や雑念を一旦振り払い、何も考えずに、ただスクーリーンを観て、映画の世界に没頭させてきた。それは一種の現実逃避だったのだが、今思えば、そこでまた自分自身を奮え立たせてきたように思う。
塞ぎ込んだ気持ちを奮い立たせてきただけじゃない。振り返れば、初めてのデートは、いつも映画館だった。

そんな私もここ最近は、コロナ禍の影響と言うよりも、日々の忙殺でなかなか劇場に行くことが出来なかったのだが、どうしても観たい映画があったので、劇場へと行き、映画を観に行ってきた。

その映画とは、清原果耶さん、桃井かおりさん主演映画「宇宙でいちばんあかるい屋根」である。
監督は今年の日本アカデミー賞で、最優秀賞を含む6部門を受賞した藤井道人さん。当時、33歳という若さで、日本アカデミー賞を受賞した藤井監督の世界観に興味があったのだ。

私はある事があってから、どんなことが我が身に降りかかろうと、人前で涙を流さないと決めている。それは泣いても何も始まらないことを知っているからだ。嬉しいことがあっても、悲しいことがあっても、私は人前で涙を流さなかった。
30歳になって父を亡ったときも、私は泣かなかった。走馬灯のように様々な想いが脳裏に甦ってきたのだが、私は涙を流さなかった。

そんな私の培ってきた哲学を、この映画はことごとく打ち破り、激しく感情を揺さぶってきたのだ。
そして気がつけば、「何べん泣かすねん、、、」と思いながら、鼻をすすっていた。
この体感は、やはり劇場でしか味わえない。

こうした感覚は食などと同じで、全く同じ物を食べても、家で食べるのと外で食べるとでは、異なって感じてしまう感覚に似ている。
私の中でDVDは、劇場での体感を経たのちに、改めて余韻を楽しむ為のものであり、その余韻に浸りたいが為に、同じ作品を私は何度もレンタルする。買った方がはるかに安上がりだと分かっていても、名作になればなるほど買わない。何故ならば、DVDをレンタルする行為そのものが好きなのだ。

「宇宙でいちばんあかるい屋根」はタイトルからして、私の興味を惹いてきていた。その理由が私は、屋根の上の景色が好きな少年だったからだった。
屋根の上が好き過ぎて中学2年のとき、二泊三日の林間合宿の旅先で、屋根へとよじ登り、初めて見る田舎の景色を見渡したりしていた。おかげさまで、その後、屋根から派手に転落してしまい、二泊三日の旅路だったはずが、即入院。1カ月、家に帰ることが出来なかった苦い思い出を持っていたりする。
そんな「屋根好き」の私からすれば、「宇宙で一番の屋根とは一体、どんな屋根で、どのような景色を見せるのだ?」と、果てしない興味が広がっていた。

確かに、桃井かおりさん演じる「星ばあ」のいる屋根の上は、宇宙で一番の屋根であった。
その中に、忘れられないセリフがあった。それは、星ばあが、つばめに放った一言。

ー夜のせいー

という言葉だ。あれだけ十代の頃は、夜が好きで朝まで遊びまわっていたというのに、私は夜が大嫌いである。嫌いになるにはなるだけの理由があって、夜に徹夜で原稿を書き続けると、必ずと言って良いほど、原稿が荒れる。
私の場合、基本ほぼ毎日が締め切りと会議みたいなものなので、ほぼ毎日のように、徹夜で原稿を書くのだが、原稿が荒れると同じように心も荒れ、そこから、まあまあ問題を生じさせてしまうクセがあるのだ。
突如、それに付き合わされるハメになる方々には、いつもそれはそれは大変、申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが、それは厳密に言うと私のせいではなかった。

ー夜のせいー

だったのである。
だからこそ、思う。ラブレターを認める際、LINEを送信する際には、夜ではなく、充分な睡眠をとり、頭が稼働しだした午前10時過ぎにしろと。それで叶わぬ恋ならば、実らぬ花だったと諦めて欲しい、、、。

また、星ばあはーしぶとく生きろーとも言っている。
生き方によっては、今の世はつまらなくて堅苦しい、窮屈な時代なのかもしれない。私自身ですら、そこまで「生きる」ということにがむしゃらさはない。
ただ、まだまだやり残したことがある以上、そうたやすく、くたばることは出来ない。
私もしぶとく生きてやろうと思っている。
しぶとく生きていれば、良いこともやってくる、這いつくばってでも生きていれば、夢だって叶う、そう星ばあは、つばめに言いたかったのかもしれない。


屋根や屋上が好きだったので、私は色々な街並みを見下ろしてきた。そこに灯るそれぞれの明かりに、様々な人間模様を想像させてきた。
これからもそれは変わらないだろう。だけど、この映画を観終わった時、たまには夜空も見上げて生きていくのもありだな、と感じさせられている自分がいたのだった。

もしかすると、つばめが見上げていた果てしなく広がる優しい夜空を、私も観ることが出来るかもしれない。


(文・沖田臥竜)

追記
ついつい今まで聞きそびれてしまい、何となく皆の会話に合わせてきていたが、ウーバーイーツの意味を今月に入って知りました。(蛇足)