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再捜査

②■不可解な死に潜む闇 ー再捜査ー

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◯直感


2018年夏。ロッカーの中で理没していた未処理捜査書類を見返している中で、1人の刑事課員がBさんの死に関する捜査書類に、何かが引っ掛かったのだろう。目を止めた。書類上では発生当時、自殺と判断が傾いていた為、豊富な資料は残されていなかった。だが、刑事の直感か。

ー果たして、死の結末として自殺を選択する際、右首頸動脈を人斬りする手段を取ることが考えられるだろうか。確かにやってやれないことはないだろう。しかし... ー

刑事課員は、手を止めたのであった。


Bさんが自宅1階で倒れているのを発見し、110番通報したのは、妻のAさんである。当時、Aさんは銀座のスナックに勤めていた。BさんとAさんには2人の子供いたのだが、AさんにはBさんとは別に親しくしていた男。Cという人物が存在していた。

ー夫が死んでいるーと、110番通報を入れたAさんだが、この時「気が動転して、どうしていいか分からなかったので電話して呼んだ」と話し、Cを呼んでいたのだった。

この一連の中に登場するのは、亡くなったBさん、そして妻のAさん。それからAさんと親しい間柄にあったCの3人しか登場しない。そのため捜査を担当した所轄では、当時このCがBさんを殺害したのではないかと怪しんだフシがあった。
だが、逮捕の決め手となるような供述や証拠は出てきていない。だからこそ「自殺の線が濃厚」として、結論づけられないままとなっていたのだ。


これらの経緯に疑問を抱いた刑事課員は、上司に再捜査を上申。その結果、捜査が再開されるのである。
捜査が再開され、まずはCの現状について調べたところ、すぐにCの所在が明らかになった。
Cはこの時、宮崎県にいたのであった。ただ娑婆ではない。宮崎刑務所に服役中だったのだ。
だからこそすぐに、Cの所在を洗えたのだった。
この時、CはBさんの死とは全く無関係な覚醒剤取締法違反(使用)で実刑判決を受けており、宮崎刑務所に服役していた。そのため、捜査を再開させた捜査員らは、宮崎刑務所のCの元まで取り調べに向かったのだった。

宮崎刑務所内にある調べ室。そこでCは、はるばる時を超えてやってきた捜査員に、こう話し出したのであった。

「実はあの日Aから、ー夫を殺してしまったーと連絡を受けて、現場へ行った」

Cは自分ではなく、Aさんが夫のBさんを殺害した、と言い出したのだ。やはりBさんの死は自殺ではなく、殺しだったのだろうか。

捜査員らは、Cの供述により、殺人事件の疑いが強まったとして、その旨を警視庁捜査一課に報告。ここから、本格的な捜査に入るのであった。

だが、既に現場もなければ、Bさんの遺体も残されていない。尚且つ、覚醒剤の使用で刑務所に服役中しているCの証言だ。無防備に乗っかかるには、あまりにも危ういと言えるだろう。
そこで今度は、Aさんの所在を洗うことになった。Cの供述が事実かどうかAさんに、直接ぶつければ良いのだ。
ただ、そこには思いもよらない展開が待ち受けているのであった。

AさんはBさんの死後、しばらくして再婚を果たしていた。その再婚相手が、ある業界の大物とも言える人物であった。もちろん、その人物は事件に何も関係していない。どころか知りさえもしなかっただろう。

だが、その人物の妻になっていた為、Aさんを殺人事件の容疑者として、Cの供述の信憑性も分からないまま、そう易々と取り調べが出来る状態ではなくなっていたのだ。

Aさんの立場から、この捜査は慎重を期す案件となったのだった。

(文・沖田臥竜)