>  > ②■ 放火か事故か『新宿・歌舞伎町雑居ビル44人死亡火災』②加熱する9.11
加熱する9.11

②■ 放火か事故か『新宿・歌舞伎町雑居ビル44人死亡火災』②加熱する9.11

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◯9.11


捜査一課とは、殺人や強盗といった強行犯を扱うだけでなく、火災の調査や捜査を担うのも捜査一課の役目となる。
当時、事態の重要性を最大限に考慮し、現住建造物放火罪で現場検証令状を裁判所から取得した警視庁捜査一課幹部は、その理由についてこのように述べている。

「放火を思わせる確実なものはない。が、大惨事なので、捜査を厳格に進めるため、放火で令状を取ることにした」

事件直後から、捜査一課では1人の男を追っていた。その男について、この事件を後に追いかけることになったある人物は、私にこのように語っている。


「当時、その男を捜査一課が追いかけていたのは間違いない。だが、私が事件を取材し始めた時には、逮捕の見込みが全く無かった。その為に私も重きを置いて調べなかったのだが、今思うとそこに後悔が残る」


彼にしては珍しいことであった。それほど慎重な人物であり、他の未解決事件についても簡単に憶測を交えて、犯人を特定したかのように述べるようなことをしない。
そもそも世田谷一家殺害事件のように、一級の殺人事件として捜査が続けられるような事件になればなるほど、犯人を特定したかのような書物などが出版される。

確かに読む分には、面白いだろう。だが果たしてそれが事実かとなれば、どれだけ理論付いていようとも真実ではない。何故ならば単純である。
犯人が逮捕されていないからだ。説いた犯人像に確証があるならば、そうした情報を世に出す前に犯人は逮捕されているであろうし、なぜ実名でしっかりと表記しないのか。私はそういった空想論者を一切、信用しない。

そういった私の持論で考えた場合、彼は人物として一級であった。私に彼を紹介してくれた人物も、次世代のエースと言われるほどの人物であった。
それほどの彼が、後悔という言葉を私に口にしたのだ。

私はその足跡をもう一度、丁寧に辿っていくことにしたのであった。


【概要】
『歌舞伎町ビル火災
2001年9月1日午前1時ごろ、東京都新宿区歌舞伎町一丁目の雑居ビル「明星56ビル」(地上4階、地下2階)が爆発音を轟かせて出火。
東京消防庁は、梯子車などを含む消防車と救急車を約100台出動させたのだが、沈下させるまでに5時間40分を要することとなる。逃げ遅れた44人もの人々が一酸化炭素中毒や全身火傷を負い死亡。死亡者数で言えば、1982年2月に発生したホテルニュージャパン(東京)での火災(死者33人)を上回る戦後5番目の大火災』


事件発生当時、歌舞伎町ビル火災は連日、大きなニュースとして、事件か事故であったか報じられ続けることになる。だが、どのマスメディアも、確かな確証を得ないままに、すぐさま一斉に報道しなくなっていくのだった。
それには理由があった。

国内で初めてとなる狂牛病問題を抱えることとなり、そして事件発生から10日後となる9月11日には「9・11(きゅうてんいちいち)」と後に呼ばれる「アメリカ同時多発テロ事件」が起き、全世界を震撼させたからであった。そのため歌舞伎町ビル火災の報道は、一気に沈静化していくことになるのであった。


だがそうした背景とは別に、歌舞伎町ビル火災を「放火」として着手した警視庁捜査一課は、徹底的に事件を洗い始めていた。
この火災を放火として扱ったのは、何も厳格に捜査を進めるためだけではなかった。そこにはやはり、放火を伺わせる根拠もあったからだ。それは大きな根拠ではなかったかもしれない。
しかし、可能性を広く考えた場合、放火を視野に入れて捜査にあたるだけの要素はあった。
そして警視庁捜査一課は、火災発生翌日、放火の疑いが強いことを明かしている。

仮に放火であれば、その罪は放火だけに至らない。事件発生当時、ビル内に人が大勢いることは容易に想像ができ、仮にそこへ火などを放てば、人が死ぬことも十分に考えられる状況だった。
そのため、放火であれば放火罪だけでなく、殺人及び殺人未遂罪にも相当することになる。

実際に2009年7月5日に大阪市此花区四貫島一丁目の雑居ビル。「児島建設ビル」1階にあったパチンコ店が放火されて5人が死亡。19人が重軽傷を負った事件では、借金で嫌気がさして火を付けた男が現住建造物等放火、殺人、殺人未遂で事件翌日に逮捕され、2016年に死刑が確定している。
こうした判例から見ても、放火であるならば、歌舞伎町の火災も、同様の罪に問われることは間違いないだろう。


ただ結論から先に言えば、今に至るまで出火原因ははっきりと解明されてはいない。

(文・沖田臥竜)