>  > ⑧■ 放火か事故か『新宿・歌舞伎町雑居ビル44人死亡火災』⑧殺害依頼
殺害依頼

⑧■ 放火か事故か『新宿・歌舞伎町雑居ビル44人死亡火災』⑧殺害依頼

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◯殺害依頼


人の命のやりとりが金銭で依頼される。非現実的なことであるが、確かにそれは存在してしまっている。ただ、その依頼を受けて「殺し」を遂行するのは、俗に言う「プロの殺し屋」などではない。少なくとも私の知る限り、テレビやマンガで見るようなプロの殺し屋など実在しない。あれは映画や小説の世界での話しだ。金で殺しの依頼を受けて実行するその多くは、借金苦で雁字搦めにされているその精算であったり、目先のいくばくの金欲しさの犯行となったり、中には先行きが短いために最後の一仕事として請負ったり、様々となるのであるが、それがプロかと言えばそうではないだろう。
何故ならば、大体が一発仕事だからだ。

殺しのプロと言う「職業」が仮に実在するならば、一度限りというのはもちろんおかしい訳であり、複雑化されているとはいえ「殺し」が依頼される環境になくてはならないことになるだろう。
仮にだ。人伝であったとしても「あそこに頼めば殺しの依頼を引き受けてくれる」という環境が裏社会で整ってしまえば、どれだけ連絡網を複雑化させていたとしても、人の口に戸は立てられない。単発的に何件かの「仕事」を請け負えば、すぐさま検挙されて廃業することになるだろう。

そして廃業は、プロの殺し屋にとって、生命へと起因する。現行の刑事罰の基準に照らし合わせれば、2件でも金銭で殺しを請負い逮捕された場合、法の裁きによって確実に今度はその者の生命が絶たれることとなる。
それも「プロの殺し屋」などと言われる次元ではなく、司法による裁きによってだ。法による裁きに未遂もなければ中止はない。確実に遂行される。従ってプロの殺し屋稼業が存在するならば、常に死と隣り合わせということになるのだ。
無論、第三者による密告や内部からのリークだって考えられる。職業として考えるならば、こうした営業妨害が起きる可能性も考えられるのだ。
金銭的な支払いにおいても、滞ったからと言って訴える訳にはいかない。

そしてもう一つ。世間が考えるよりも、殺しの依頼の成功報酬の相場は安い。これほど割り合わない稼業はないだろう。
そうした状況を考えても、「プロの殺し屋」などは存在しない。 

余談ではあるが、私の地元、兵庫県尼崎市で起きた「尼崎連続殺人事件(2012年10月に兵庫県尼崎市で発覚した、角田美代子を主犯とした連続殺人及び死体遺棄事件)」についても、真相を追った何冊かの書籍が出版された。その一冊に、尼崎連続殺人事件の主犯であった角田美代子らのグループとも関わりがあり、ヤクザとも繋がりのあるもっと危険な「X」なる集団が存在している、といった記述があった。だが実際その「X」なる集団は、生活保護を不正自給しており、朝から駅周辺などにたむろしている人間らに過ぎない。読む分には面白いかもしれないが、事実は実際そんなものである。


笠原友子からYに殺しの依頼が持ちかけられたのは、2000年10月。新宿区の某ホテルのコーヒーラウンジでのことであった。


【概要】
『歌舞伎町ビル火災
2001年9月1日午前1時ごろ、東京都新宿区歌舞伎町一丁目の雑居ビル「明星56ビル」(地上4階、地下2階)が爆発音を轟かせて出火。
東京消防庁は、梯子車などを含む消防車と救急車を約100台出動させたのだが、沈下させるまでに5時間40分を要することとなる。逃げ遅れた44人もの人々が一酸化炭素中毒や全身火傷を負い死亡。死亡者数で言えば、1982年2月に発生したホテルニュージャパン(東京)での火災(死者33人)を上回る戦後5番目の大火災』


「父が私に断りなく、私に遺産の相続を決めてしまった。もう殺すしかない。お願いできないか」

そそのかしたのは、確かにYである。だが、この笠原の言葉が、笠原を2度と社会の地を踏ませない無期懲役の判決へと導いてしまうのであった。

Yが代表を務める「ひまわりの会」と呼ばれた占いグループには、アドバイザー的存在のWという男が存在する。

笠原の殺害依頼を受けたYは、すぐさまWに工務店経営者で笠原の実父となる丸山寿治さんの殺害を指示。これによってWが同年12月から、丸山さん殺害のための殺し屋を探すことになった。
この時には、既に笠原から丸山さん殺害の着手金として現金で500万がYへと手渡されていた。

まさか手塩をかけて育てた娘が、自分の遺産欲しさに、自分を殺すために殺害を依頼し、500万もの金を使っていることなど、当時の丸山さんは想像することすら出来なかっただろう。

Yから殺害を指示されたWは、まず知り合いの暴力団周辺者に声をかけ殺害を依頼。反応が良かったのだろう。この時にYが笠原から受け取った着手金を、声をかけた暴力団周辺者に渡している。またWは別のグループにも渡辺さんの殺害を依頼するのであった。この辺りを見てもWが普通の一般人でないことが垣間見れる。本来、通常の社会生活を営んでいれば、周囲に金で殺害を依頼できる相手など存在しないはずだ。だがWは、二つものグループに渡辺さんの殺害計画を持ちかけている。
ただWのこの動きはあまりにも早計であった。殺害依頼といった考えられない、いや考えられないような内容であればあるほど、二つも三つものグループに依頼してはならない。殺しを二つのグループに依頼するということは、それだけ人を金で殺そうとしてる秘密を暴露していることにも繋がるし、実際二つのグループが別々で殺害目的のために動き出したとすれば、後々になって必ずトラブルの元になってしまう。

Wの凡ミスは更に続く。殺害を依頼していたグループに、丸山さん宅の住所を誤って伝えてしまうのだ。挙句、手付金を渡していた人間らに、手付金をそのまま持ち逃げされるという失態まで犯してしまうのだ。

これに苛立ちを見せたのが、丸山さんの遺産や成功報酬をあてにしていたYであった。
 
「年内に殺して欲しい」

とWを催促するのだ。

殺害を依頼し遺産の相続を目論む女。殺害の依頼を金銭で請負い、多額の遺産金を狙う女。

2人の女の罪は同等レベルの刑罰が適応されても良いのではないかと思うのだが、のちに2人の明暗ははっきりと分かれることになる。

殺害を依頼した笠原が無期懲役だったのに対して、ひまわりの会の代表Yの判決は18年であった。

仮に満期出所であったとしても、Yは再来年には出所してくる予定なのである。

(文・沖田臥竜)