>  > ■16年の時を経て解決された『秘密の暴露』① 文・沖田臥竜
秘密の暴露

■16年の時を経て解決された『秘密の暴露』① 文・沖田臥竜

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

◯暴露

『秘密の暴露』とは、犯人しか知り得ない現場の詳細や状況を供述することを言う。

2018年12月8日の深夜。師走に入り慌ただしくなり始めたこの時期に、何の前触れもなく突然、1人の男が浅草警察署へとやってきた。

「人を殺したことがばれたので出頭した」

事件発生以来、一向に有力な容疑者が浮上しないままコールドされる事になっていた未解決事件、「島根二丁目アパート内強盗殺人事件」が一気に動き出した瞬間であった。


島根二丁目アパート内強盗殺人事件
【概要】
2002年12月22日午前11時55分ごろ、東京都足立区島根二丁目のアパート「レオパレス西新井ミヤマ」207号室で、会社員の成嶋健太郎さん(当時23歳)が両足首を電気コードで縛られて、床の上に倒れているのが発見された。顔や額、背中は複数回、刃物で刺された傷痕が残されており、頭は鈍器で強く殴打された形跡があった。司法解剖の結果、直接的な死因は、頭部を強く殴打されたことによる脳幹部挫傷。室内からは成嶋さんの財布がなくなっていたことから、警視庁捜査一課は強盗殺人事件として、西新井警察署に特別捜査本部を設置。だが捜査は進展を見せず、数ヶ月で捜査班は別の事件へと転戦することとなり、未解決のまま事件はコールド(凍結)されることになっていた。


精神疾患がある人で「人を殺した」などと突拍子のないことを言い出す人は、医学的にもしばしばいると言われている。突然、警察署に来る人の中には、話しのつじつまが合わなかったり、脈絡なく一方的に話し出す人物も少なくない。
当初、対応にあたった宿直の署員もそうした人物かと考えていた。

実際に暮も押し迫った2011年12月31日。警視庁本部に突然出頭してきた平田信(当時、オウム真理教事件で指名手配)に対して、本部正面玄関に立っていた機動隊の男性警察官は真に受けずに、「丸の内警察署に行ってください」と追い返している。
まさか重大事件の指名手配犯が、大晦日に突然、出頭してくるとは誰も考えれないだろうし、真に受けろという方が酷であったかもしれない。
追い返された平田信はこの時、言われた通り500メートル離れた丸の内警察署に自ら出向き、そこで逮捕されてることになった。


浅草警察署では尋ねてきた男が「人を殺した」と言っているので、一応、淡々と男の話しを聞くことになった。
男が話す内容は、2002年に発生した西新井のコールドしていた強盗殺人事件であった。
だが、淡々と男の話しを聞いていた宿直の署員が、次第に男の話しに耳を傾け出すことになる。

何故ならば、男の話しの中身は、明らかに事件に関与している者の話し方だったからだ。

警察署の当直には、緊急事態に備えて必ず刑事も泊まり込んでいる。署員から報告を受けた刑事課が今度は、男の対応にあたることになったのだった。そして、男の話しを聞いた刑事課がすぐに、本部の捜査一課に報告。それを受けて、特命対策(未解決担当)の幹部捜査員らは、ざわつき始めることになるのだ。

この時、浅草警察署に突然やってきた男は、ソープ街「吉原」で知られる台東区千束4丁目に住む無職の川瀬直樹(47歳)であった。
川瀬の身柄は、日付の変わった12月9日に浅草警察署から西新井警察署へと移され、捜査一課特命対策室が担当し、本格的な取り調べへと移行することになったのであった。

捜査一課にとっては、16年前の事件を一気に解決へと向かわせる強運な展開となったのだが、この時、捜査一課はある事情を考慮。結果、慎重を期した捜査一課は、すぐに川瀬を逮捕する選択をとらなかったのであった。


(文・沖田臥竜)