>  > ■最も別格な未解決事件 世田谷一家殺害事件④ 文・沖田臥竜
異常性

■最も別格な未解決事件 世田谷一家殺害事件④ 文・沖田臥竜

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◯異常性

【概要】
『2000年12月30日。東京都世田谷区上祖師谷3丁目の宮沢みきおさん(当時44歳)方2階建て宅に何者かが侵入。自宅にいたみきおさんと妻の泰子さん(当時41歳)、長女にいなちゃん(当時8歳)、長男礼くん(当時6歳)を殺害。翌31日午前10時50分ごろに隣に住んでいた泰子さんの母親が発見。すぐさま警視庁捜査一課は、強盗殺人事件として成城警察署に特別捜査本部を設置するものの現在に至るまで未解決のままになっている。日本殺人事件史の中で最も有名な未解決事件』


犯した罪の大小ににかかわらず、本人に多少なりとも罪の意識がある場合、その場から1秒でも早く立ち去りたいというのが、犯罪者の心理のはずである。スーパーで万引きしたレベルでも、店員が気がついた時には、万引き犯の姿はない。
それが殺害ともなれば、尚更のこと。その場からすぐに逃げ出したい衝動に駆られるはずだ。
殺人を犯してでも、強盗する目的であったとしたならば、殺害後に目的の金銭を探す為、現場にとどまることは確かに考えられる。ただその時の状況は、事件発覚と隣り合わせである。必然的に必死になって、室内を物色するはずだろう。
だが犯人は、アイスクリームを食べていた。宮沢さん一家4人もの人たちを殺害したというのに、金銭などあるはずもない冷蔵庫を物色し、ペットボトルのお茶をラッパ飲みしながら、アイスクリームのカップを握り潰すような格好で、アイスクリームを食べているのである。

明らかにその光景は、異常としか表現のしようがない。

よしんば殺害の動機が何らか怨恨であったとしても、そのような行動をとる人間はまず考えられない。
物音などを不審に思い、第3者が宮沢さん宅を訪問したとしてもおかしくないのだ。そういった本来あるべき心理が、犯人には全く機能していないのだ。
世田谷一家殺害事件の犯人は、その時点で人間とすら呼ぶことができないのではないだろうか。

繰り返すが、多くの殺人事件では犯行後、犯人は直ぐに現場から離れるものである。数時間にわたって現場に滞在し続け、飲食をすることの異常さは、通常の事件プロファイリングでも極めて珍しいケースと言えるだろう。


これまで警視庁は情報提供を呼びかけるために、詳細な現場の捜査状況を少しずつ公開してきた。
基本的に捜査状況を公表しない他の殺人と比べて、異例な対応といって良いだろう。それを見ても、いかに世田谷一家殺害事件の捜査が難航しているかを物語っている。

当初でも書き記したように、易々と、容疑者にたどり着いたと言える事件ではないのだ。


例えば2009年にはヒップバックの中から検出された砂が、米国カリフォルニア州の砂と酷似していることを明らかにした。
また現場に残されたトレーナーからは、「ローダミン」という蛍光塗料が検出されていたことも、報道陣に公開してみせた。
そしてジャンバーに残された砂は、三浦半島の3つの海岸にある砂だということも公表している。

蛍光塗料については、宮沢さん宅の一階車庫にあった物入れの引き出しにも、同じ塗料がついていたことを発見。事件当時、犯人がこの車庫に入った形跡がなかったことから、犯人が過去に宮沢さん宅を訪れていた説や、宮沢さんと犯人がこの塗料に関する仕事で、一緒になった可能性がある説が浮上したこともあった。

2018年12月には、先にも記したように現場住宅や周辺の3Dを作成して公開。同時に犯人が現場に残した黒いハンカチのレプリカなども公開し、去年12月にはハンカチの真ん中に切れこみを入れた包み方が、フィリピン北部に伝わるという情報も公開させている。
些細な情報でも構わないという姿勢で、情報提供を呼びかけているのだ。
それはどんなことをしても、世田谷一家殺害事件を迷宮入りにさせとく訳にはいかない、とする警視庁の執念の捜査と言えるだろう。

ただ、これまで公表された全てが、捜査員の総意であるかと言えばそうではなく、2018年5月に事件当時の犯人の年齢について「15歳から20代くらいの細身の男」とやや範囲を絞って公表したのだが、「その上の世代の可能性もある」と指摘する捜査員も存在している。

細身と判断されたのは、ヒップバックの紐の長さから推定された要素であった。


(文・沖田臥竜)