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ーさよならすぎちゃんー

尼崎の一番星たち ③ ーすぎちゃんの落日ー 文・沖田 臥竜

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塚口には、今もまだ大手デパートに吸収されず一本独鈷の独立路線の運営を続ける「つかしん」というデパートが存在する。
それなりにお客さんだって入っている。私たちが若い頃は、そのデパートにたまり、カツアゲをしたり、されたりした青春の場所でもある。

私たちにとって青春の場所ということはだ。青春街道ど真ん中のすぎちゃんには、今もまだ何かと足しげく通う場所なのだろう。

そのデパートで、すぎちゃんは逮捕されてしまったのだ。

ヒデキからのLINEには、こう書かれていた。

ー塚口のヒーローすぎちゃんがつかしんで起こした凶悪事件ですー

ヒデキが送ってくれたニュース記事によれば、つかしんに入っているテラスで友達と勉強中だった16歳の女子高生の胸などを背後から触ってしまったというのだ。

これでは、すぎちゃんただの変態ではないか。全くもって笑えない。何歳になっても、地元の夏祭りには早い時間から必ず現れ、入口でうんこ座りしながら、あたりにガンを飛ばしていたすぎちゃん。
そんなすぎちゃんを見て、みんなクスクスと笑っていたというのにだ。いわばそれは夏の風物詩でもあったのにだ。そんなことをしてしまっては、もうすぎちゃんを見て、誰も笑ってくれないではないか。

彼が18歳の頃、暴走行為で逮捕された際、ガンガン攻めてくる取り調べの刑事に対して、すぎちゃんは言った。

「白龍なめとったらあかんぞ!」

そして、ズボンのファスナーを使い、留置場の壁に

ー年少の半年や一年くらい笑いながら行ってやる!五代目白龍会すぎちゃんー

と落書きして見せている。

後日14歳で逮捕され、留置場にぶち込まれて途方に暮れていた私は、その落書きを見て大いに励まされた。
だが、もうあの頃のすぎちゃんはもういない。
取り調べにあたっている刑事も変態と化したすぎちゃんに、内心呆れ果てているのではないだろうか。

主を失ったすぎちゃんの実家の自室は、時代に取り残されたまま、ひっそりと今はすぎちゃんの帰りを待っている。

多分、すぎちゃんの親御さんは、もう一生帰ってくるな!と思っているかもしれないが、、、。


(文・沖田 臥竜)