>  > 『反社』の隣人 ースクープは眠るー ⑦ ー歌姫の悲劇の二股ー 文・沖田 臥竜
ー歌姫の悲劇の二股ー

『反社』の隣人 ースクープは眠るー ⑦ ー歌姫の悲劇の二股ー 文・沖田 臥竜

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彼女の全盛期。人々は彼女のことをこう呼んだ。

ー歌姫ー

街を歩けば、どこかしこから彼女の曲が流れ、その人気はある種の社会現象を巻き起こしていたとさえ言える。
下積みが長かったと言われた彼女だが、瞬く間にスターダムをかけあがったかと思うと、歌姫の座に君臨してみせたのであった。

そんな歌姫には、世間が公然と認める彼氏が存在していた。
歌姫の彼氏として、世間が認めるのである。普通の男性ではない。彼氏もまた次世代を担うトップアイドルだったのだ。
そんな2人を人々は美貌の眼差しで見つめていた。誰しもが理想のカップルとして、2人の名前をあげた。

しかしその裏側では既にその時、不許和音が忍び寄っていたことを世間は知らない。


歌姫の数ある名曲の中に一曲の歌がある。彼女が歌うその姿は今でもネットなどで観ることができるのだが、彼女の横で激しくギターを弾く男性。その男性の胸には、歌姫とお揃いのクロムハーツのネックレスがつけられていた。そう、歌姫は次世代を担うトップアイドルと交際をする傍らで、彼氏とも付き合っていたのだ。それはすぐにトップアイドルの知るところとなってしまう。
激昂するトップアイドルに対し、彼氏は引かなかった。元々は現場職人で身体を鍛えていた為に腕に自信があったのか、それほどまでに歌姫を愛していたのか、トップアイドル相手に一歩も譲らないのだ。
歌姫を交えた話し合いは、何度も持たれたと言われるが、決着を見ないまま平行線をたどり続けたのだった。

だが突然、その三角関係が終焉を迎えることになる。今も昔もこういう表沙汰に出来ない話しを解決するのが、暴力団と言われるヤクザと相場が決まっている。中でも大きな勢力が動いたのだ。

ケンカが強い、度胸がある、彼女を愛するためなら誰にだって立ち向かう、、、そんな個人の力が如何に無力であったか、職人上がりの彼氏は思い知らされた上で、歌姫に別れを告げることになってしまったのだった。それだけではない。それまでの人間関係も全て断ち切り、忽然と姿を消してみせたのである。

噂では、大きな勢力の追い込みを逃れるために、海外へと逃亡をはかり、そこで暮らしているのではないかなどと言われているが、その後の彼氏の消息を知る者はいない。

そして、歌姫とトップアイドルも結局は破局。
様々な人間が様々な思惑の中で暗躍したのだが、歌姫の奏でるバラードの歌詞のように、2人が結ばれることは決してなかった。

時は儚くも残酷である。あれだけ一世を風靡した歌姫も、今ではメディアで見かけることがほとんどなくなってしまった。


文・沖田 臥竜