>  > 懲役に咲く!傑物ども ー文政パートⅢ ー狂犬Nとジャイアンー 第9話 文・沖田 臥竜
ー狂犬Nとジャイアンー

懲役に咲く!傑物ども ー文政パートⅢ ー狂犬Nとジャイアンー 第9話 文・沖田 臥竜

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ジャイアン。その異名の通り、自分の物は自分の物。他人の物も自分の物。至極、単純で分かりやすい思考の持ち主であった。
それが通らなければ、自慢の腕力を振るうだけである。ステゴロキング、バッテツやストリートファイターKとは、また違ったケンカ自慢である。
いくらバッテツとストリートファイターKが不在とはいえ大本命の文政と、世の中の全てに牙を剥く狂犬が帰ってきたのだ。
大阪府警に言わせれば、それだけでお腹一杯なのに、ジャイアンまで帰ってきてしまったのである。
くらくらしていたに違いない。

生野区の浄化活動は、そうした中で行われたのであった。

その日、いつものバーで文政と狂犬Nとジャイアンの3人は、寝酒のグラスを傾けていた。そのバーに変わりがあったとすれば、文政の出所後に経営者が文政に変わったくらいで、後は何一つ変わり映えがなかった。

「よう飲んだ。ほんなら帰ってねるど〜」

ジャイアンのがなり立てる歌声が店内に響き渡る中で、最初に席をたったのは文政だった。

「なんやマサ〜もうかえるんかい。しけとんの。気つけて帰れよ、愛しとんど〜」

狂犬Nが焼酎の入ったロックグラスを傾けながら、文政の背を見送った。
3人に懲役のブランクは微塵もなかった。
出所してきたその日から、3人は3人のままであった。

文政が出所後に、気にいってしまったマンションのすぐ近くというだけの理由で、経営者が文政に代わってしまったバーは、テナントビルの2階にあった。

文政がバーを後にした時は、まだクラクション薬局は開店していない。
文政バーの斜め前で、クラクション一味が集まり出し、薬局屋の商いを営業し始めた頃、Nがバーから降りてきてしまったのだ。

神出鬼没のクラクション薬局。生野区民なら、SNSより迅速に文政の出所後、バーの経営者が文政に代わったことを知り、誰も周辺には寄り付こうとしなかったというのに、圏外からやってきた地の不利故の情報不足が災いしてしまった。
クラクション男こそ、その場に居合わせなかったものの、文政バーの斜め前で薬局の商いをしてしまったのである。しかも降りてきた狂犬を全員で睨め付けながらである。
無知とは実に怖いもの知らずである。

「アイゴ、、、、、」

見られて目を離すようなら、狂犬などと裏社会で呼ばれやしない。小声で言葉を漏らすと、口元を一瞬、綻ばせた。
そして、クラクション薬局の集団の中で、一番鼻息荒くNを睨みつけた豆タンクのような男にゆっくり近づいていくと、短い言葉を発した。

「こい」

豆タンクの鼻息は一層、増した。鍛えられた体躯を見ても豆タンクは、腕に自信があったのだろう。
Nの呼びかけに威勢良く、歩をNの前に進ませた。

「うぐっっ、、、」

豆タンクが鼻息で膨らませていた鼻を抱え込むようにしながらうずくまった。鼻息がNの癇に障ったのだろう。豆タンクの鼻を目掛けて、Nの右ストレートが炸裂したのであった。Nはすぐさま左右に首を振り、次のターゲットに狙いを定めようとしたが、クラクション薬局の半グレたちは、蜘蛛の子を散らすように逃走をはかった。

「アッハハハハッッッ!!!またんかいっ!クソ汚れどもッッッ!!!」

Nは笑いながら、逃げるクラクション薬局の半グレたちを追いかけた。
因果応報。日頃の行いの悪さが祟ったのだろう。更なる悲劇がクラクション薬局を襲った。

ジャイアンの登場である。


文・沖田 臥竜