>  > 『反社』の隣人 ースクープは眠るー ③ 文・沖田 臥竜
ー撮り逃したグラビアアイドルの大スクープー

『反社』の隣人 ースクープは眠るー ③ 文・沖田 臥竜

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ー撮り逃したグラビアアイドルの大スクープー

あとに様々なスキャンダルや転身などで、世間を騒がせたKが、まだグラビアアイドル絶頂期の頃。
ある情報をもとに、彼女の身辺を洗い、彼女に狙いを定めていた捜査機関があった。
その捜査機関とは、数々の薬物関連の逮捕に成功してきた実績を持つ麻薬取締部。通称「マトリ」であった。

マトリがKを狙うということは、彼女には薬物使用の疑惑がかかっていたということである。捜査の結果、その疑惑は十中八九、間違いないと確証すら得ていたのだった。
Kの逮捕は、既に秒読み段階に入ったとさえ見られていた。だが、Kの逮捕には、あることが大きな妨げとなり横たわっていたのだ。

Kサイドでも既にその時、背後から捜査の手が忍び寄っていたことに気づいていたのかもしれない。
マトリの捜査力を持ってしても、彼女の住んでいるヤサ。つまりその時に、Kが住んでいた家を特定することが出来ずにいたのだ。
Kの住民票は実家に置いてあった。だが彼女が実家に帰っている形跡はない。
マトリサイドとしては、どうしてもKの住んでいる家に踏み込み、言い逃れできない状態で彼女を挙げたかったのだ。
人気絶頂のグラビアアイドルが相手だけに、失敗は許されず、大々的に捜査することも憚られていた。
そこで、あくまで非公式ながら白羽の矢が立ったのが、ある出版社であった。

ーもしKのヤサを掴めば、逮捕の決定的瞬間をカメラに撮らせてやるー

もちろん全ては非公式であり、社内でもトップシークレットとして事が進められ、Kの尾行班として精鋭部隊が人選されることになったのだった。

タイムリミットは1週間。期限内にKの住んでいる家を特定できれば、世紀のスクープを飛ばすことができることになった。
だが、それは決して容易なことではなかった。

芸能界の薬物事案に対して、数々の逮捕の実績を持つ、麻薬取締部の捜査力を持ってしても、なかなかKの家を特定できずにいたのである。
それだけでも、Kの家を突き止めるのは困難だということが分かる。
1日2日と時間が経過していき、尾行班は一向に彼女の消息を掴めずにいたのであった。

そこで尾行班は直接Kを探し出し、そこから彼女を尾行し、家を特定することを断念。ターゲットをKではなく、当時所属していたプロダクションの社長に切り替えたのだ。
プロダクションの社長ならば、Kと必ず接触するはずだと睨んだのである。

プロダクションの社長の尾行から5日目。リミット期限の最終日。遂にプロダクションの社長とKが都内で接触。尾行班は2人を尾行することに成功したのである。その時、都内で接触した2人は、次のKの転居先を探していたのであった。

そこを追跡することに成功すれば、大スクープは間違いなかった。しかしその追跡劇は、結果として失敗に終わってしまう。

異常なほどの警戒心を周囲に放っていたKが尾行班の存在に気がつき、警察へと通報する暴挙に出たのである。
マトリの捜査は無論のこと、尾行班の追跡も全て秘密裏に進められていた。
その為、通報によって駆けつけた警察官が知るよしもなければ、ありのまま事情を説明することもできない。
尾行班はグラビアアイドルであるKを付きまとっていたとして、その場から警察署へと連行されることになってしまうのであった。

こうして決定的瞬間のスクープはお蔵入りすることになり、警戒心を強めたKは更にそこからガードを固めることになったのであった。
同時にKは、そこからより一層、覚醒剤の快楽に溺れていくことになるのである。

その後のKの凋落ぶりを見る限り、その際に居住地を特定され、逮捕されていた方が彼女のためになっていたかもしれない。


文・沖田 臥竜