>  > 懲役に咲く!傑物ども 『関東大炎上篇③』ー文政パートⅢー 文・沖田 臥竜
ー報復ー

懲役に咲く!傑物ども 『関東大炎上篇③』ー文政パートⅢー 文・沖田 臥竜

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ー報復ー


襲撃事件の翌日。歩くこともままならない状態で、病院から抜けだしたSは、事件現場となった上野から少し外れたファミリーレストランにグループの主だった幹部を集めていた。

「ええか。お前ら返しなんて考えんなよ。オレらはそりゃ世間から見たら真っ当な仕事をしてないかもしれん。それでもオレらはオレらなりに、信念を持って汗を流して仕事しとんねん。やったらやられたの商売やないねん。傷は治る。返しなんて考える暇あったら、何事もなかったように仕事しとけ。これくらいで動揺して、現場に誰も立ってなかったら、それこそ笑われてまう。ええからいつも通り仕事しとけ」

Sの話に幹部らは、下を向いたまま誰も頷こうとはしなかった。「なんでですか!なんで社長がここまでやられているのに仕返ししたらあかんのですか!」などという茶番劇もない。ただそこには、重たい沈黙が漂っていただけであった。

そして、このSの言葉。仕返しをするな、という言葉があとの裁判で、仕返しをするなという言葉は、逆に、仕返しをするように指示したものとされるとして、認定されてしまうのだ。

事件から、ちょうど3ヶ月後。警察の介入により、両グループの衝突は、小競り合いも含めて沈静化していた。地元グループのトップであるYは、あれだけ派手な暴行を主導したというのに、逮捕されることもなく高級車を乗り回し、タワーマンションに暮らしながら、人生を謳歌していたのであった。
ただSグループの存在が不気味ではあったかもしれない。中町通には、事件後も平然とした姿のSグループの従業員らがいつもと変わらない様子で客を引いていたのだ。トップがやられ怒りを露わにすることもなければ、かと言って屈伏しているようにも見えない。何事もなかったように平然と振舞っているのだ。
そこが引っかかると言えば、引っかかっていたかもしれない。
だが、まさかその3ヶ月間、自身の動向をある探偵らによって入念に調べられ、車にGPSがつけられているとは思いもしなかっただろう。

その日、Yは自宅のタワーマンションに朝帰りであった。マンションの駐車場に車を停め、物陰から人影に気づいた時には、既に遅かった。
顔を覆面で覆いかぶさった2人組が駆け寄ってきたかと思うと、Yの顔面に催涙スプレーを吹きかけ徹底的に暴力を行使してきたのだ。そして最後に、その暴力から逃げようとするYに向けて、硫酸をブチかけたのだ。これによって、Yは全治不能の重傷を負うことになった。

だが、報復はそれで終わらなかった。ちょうど一年後となる同日。Yが硫酸をかけられた同じ日に、今度はYのグループの実質的NO2になる幹部が、Yと同じく帰宅後に何者かに襲われ、催涙スプレーを吹きかけられたあとに激しい暴行を加えられ、同じく硫酸をかけられ重傷を負わされたのである。

この話は瞬く間に広がり、誰しもがSに暴行を働いた報復ではないかと噂しあったのであった。それは警視庁の捜査員らも同様であった。
しかし、Sを始めとしたSグループに全く変わった様子がなかったのだ。

そして、翌年のまた同じ日。Sに激しい暴行を働いた地元グループの幹部が何者かによって襲われたのである。


文・沖田 臥竜