>  > 懲役に咲く!傑物ども 『関東大炎上篇①』 ー文政パートⅢー 文・沖田 臥竜
―発端―

懲役に咲く!傑物ども 『関東大炎上篇①』 ー文政パートⅢー 文・沖田 臥竜

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ー発端ー

今だから話そう。

今から約4年前。当初、警視庁の捜査員は、その過激さから、六代目山口組と神戸山口組の代理抗争ではないかとさえ口にしたほどであった。

現在の首都東京は、来年にオリンピックを迎えることもあって、経済的にバブルの様相を呈している。
それは私自身、仕事で上京するたびに肌で感じることだ。経済が潤うと、必然その利権を巡り衝突すれば血生臭くなるのは、世の常なのかもしれない。
事件はそうした中で起きた。

後に上野硫酸事件と呼ばれる発端は、客引きの縄張り争いを巡る些細な出来事に過ぎなかった。

舞台となったのは、上野の歓楽街の中町通。新宿歌舞伎町を始め、オリンピックに向けた当局の浄化は功を奏し、首都東京の歓楽街は軒並み風俗店などを撤退させていた。そうした中にあって、最後の牙城と言われていたのが、中町通となる。
ここには、Sをトップに他府県から集まって力で根を張ってみせたキャッチグループと、グレービジネスに次々と手を染め、組織を拡大させることに成功した地元グループが勢力を二分する形で凌ぎを削りあっていた。

ニュースなどでも報じられているが、これまでにも両グループによる乱闘騒ぎは、何度となく確かにあった。だが、その都度、両グループの幹部同士が話し合い収集をつけてきていたのだ。
しかしその時ばかりは違った。勢力を拡大させていた地元グループが、新たなグレービジネスに参入したことで財を成し、急速に勢力を発展させていたのだ。客引きにおいても裏社会のビジネスは、最後に物を言うのは、どこまでいっても暴力である。
以前であれば、些細なトラブルぐらいなら、すぐに両グループとも落とし所を見つけ、それ以上のトラブルに発展しないように努めていたのだが、勢いに乗っていた地元グループは、「いつまでもこのままじゃ示しがつかないですよね。会社同士の話にしますか?それともこの話、上に持っていきますか?」と背後関係をちらつかせてみせることが度々となってきていたのだ。

そうした背景の中で、「お前らの態度、生意気だよね」と言いながら、いちゃもんをつけたのは、やはり地元グループからであった。

常日頃から、くだらないトラブルは商売の妨げになるとして相手にしないように徹底させていたSのグループは、そうした挑発にも乗らなかったのだが、あまりの執拗さに1人の従業員が、「ええ加減にしとけよ!」となってしまい、路上で2対2の乱闘になったのだ。
その場を優勢に進めたのは、Sのグループのメンバーであった。一旦はそこで、どちらも現場から離れ、拠点にしていた事務所へと帰っている。
そこで、報告を受けた地元グループの代表のYは、激昂。すぐさま配下の半グレ10名を引き連れて、Sのグループの事務所に殴り込みをかけたのだ。

互いに運が悪かったとするならば、普段は事務所に顔を出すことのないSが事務所に訪れてしまっていたことだっただろう。

乱闘騒ぎを起こした従業員から事情を聞いたSは、まさかすぐに半グレを引き連れた地元グループが乗り込んでくるとは、思いもしなかった。
だが油断もなかった。Sは地元、兵庫県尼崎市から自分の配下の人間数人だけを連れ、激戦区と言われた上野で根を張った男だ。殴り込んできた際も、全く臆することなく、半グレの若者たちを払いのけ制止させていた。その際に、たまたまマウントをとっていたSの顔面に、地元グループのメンバーが横から蹴りをヒットさせてしまうのだ。

あとに、Sの顔面を蹴ってしまったその若者は、「しまったと思いました...」と警察の取り調べで供述している。


文・沖田 臥竜