>  > 義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか? シリーズ"しばき隊の真実" 第十一回(下)
第十一回 ノイエホイエこと菅野完という人物(下)

義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか? シリーズ"しばき隊の真実" 第十一回(下)

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

第十一回 ノイエホイエこと菅野完という人物(下)

 ヘイトスピーチ(差別扇動表現)を撒き散らすデモが起きれば、ありとあらゆる手段を使って食い止めようとした『しばき隊』。しばき隊は、その名の通りレイシスト(差別主義者)と闘い「しばく」だけが目的の集団だった。なので、私みたいな右翼や、野間易通のような左翼など思想を問わない多種多様な人材がしばき隊にはいた。
 トップダウン式の組織ではなく、横の繋がりであったしばき隊には明確なリーダーはいなかったが、群れを成せば目立つ者や影響力の大きい人間が出てくる。初期のしばき隊で中心的人物であった1人といえば、noiehoie(ノイエホイエ)こと菅野完だろう。
 今回は、しばき隊から安倍政権を揺るがす森友学園騒動のキーマンとなった菅野完について書きたいと思う。

 ※編集部注......しばき隊とは、差別主義者にカウンターと呼ばれる抗議行動をする『レイシストをしばき隊(2013年解散)』、『男組』、『C.R.A.C.(クラック)』、『OoA(オーオーエイ)』、『憂国我道会』などのいくつかのグループ、そしてどこの集団にも属さないでいる人々の総称である。

「ノイホイが金をくすねたらしい」
 ある日、高橋直輝が深刻そうな面持ちで私に言った。東京大行進等の反差別運動へのカンパを、菅野完が着服したというのだ。確かに東京大行進のカンパの通帳は菅野完が管理をしている。私には信じられなかった。まさか、あの菅野完が私利私欲でカンパを着服するわけがないだろう。何かの勘違いではないのか。
「本当ですか?」
「そうらしいんだ、祐二郎。俺が確かめてやる」
 後日、高橋直輝から、菅野完を呼び出し2人で会って話し合ったことを聞いた。高橋直輝がどんなに追求をしても、菅野完はカンパの着服を認めなかったらしい。そして度重なる要求をしたが、頑なに証拠となる通帳を見せなかったという。見せられない理由は1つしかないはずだ。カンパを着服しているからだろう。
「本当だったよ。あの馬鹿。祐二郎、もうノイホイと関わるな」
 こうして、通帳の管理人という立場を悪用し、東京大行進等に充てるよう考えられていたカンパを着服した菅野完は、カウンター界隈から総攻撃を受けて反差別運動をパージされた。信じたくないことが、現実となってしまったのだ。私は心にぽっかりと穴があいたような虚しさに襲われた。
 その後、菅野完は着服されたカンパ金を11月になって全額を口座に返還した。つまり、菅野完は着服をしたが、それは一時的なものであったことになる。なので、きちんとカンパ全額が反差別運動のために正しく使用されたことは間違いない。それだけは、はっきりしておく。
「山口君、ノイホイさんはやっちゃいけないことをしました。連絡きても無視してください」
 このことで、私は今までのように菅野完と接するわけにはいかなくなった。別に私自身は被害を受けてはいないが、菅野完は善意の浄財であるカンパを一時的にでも着服していたのだ。当時の私は周りの皆の意見に沿うしかなかった。菅野完は私の携帯を何度も鳴らしてくれたが、電話に出ることはできなかった。私は菅野完へのやり場のない気持ちを、酒を飲んで誤魔化す日々を送るようになる。仲良かった先輩と会えなくなるのは本当に辛いことだ。傷心の私とは関係なく、時は無情にも過ぎていく。菅野完は反差別運動から追放され消えていった。
 が、事態の成り行きはこれで終わりではなかった。数年後、菅野完は、再び表舞台に姿を現すようになる。安倍政権を支えている保守系市民運動の活動を描いた『日本会議の研究』という本を記し、菅野完は一躍ベストセラー作家に転じたのだ。さらには安倍晋三総理の癒着が疑われた森友学園問題が起きると、著書に渦中の人物である籠池泰典理事長を取り上げていたのもあり、菅野完はメディアから引く手あまたとなる。菅野完は籠池泰典理事長の代理人のように立ち振る舞い、関係者しか知りえない情報を報道陣の前で暴露する。テレビのスイッチを入れれば菅野完が出ている状態にまでなった。
 菅野完がスポットライトを浴びているのを見て、私は嫌な予感がしていた。籠池泰典理事長のことが胡散臭くて信用ならなかったのはある。しかし、それ以上にカンパを着服した金銭トラブル以外にも、私は菅野完の様々な危ない噂を聞いていたからだ。あえてここで詳細は書かないが「七夕事件」などの詳細を知り私は不安を禁じ得なかった。
 案の定、私の予想通り菅野完のさらなる衝撃的なスキャンダルが浮上する。菅野完は自身がおこなっていた社会運動の賛同者の女性に対して、無理矢理に性行為を迫り性的暴行をしたということで、被害者女性から訴えられていたのだ。金銭トラブルの次は、女性への性的暴行事件である。2018年2月、結果的に菅野完が性的暴行をおこなったのが東京高裁により認められ、110万円の支払いが命じられた。真面目に活動をする裏側でそんなことをしていたのだ。当然、菅野完はこの性的暴行事件が表沙汰になったことで、メディアから袋叩きに遭う。
 そして、恐ろしいことに菅野完の騒動はこれでも終わらなかった。20018年8月の「週刊現代」の報道が爆発する。1997年8月、菅野完がアメリカに在住していた頃に、当時交際していた女性に暴行をし警察に傷害罪で逮捕されていた過去が明るみに出たのだ。この件で翌年の1998年5月29日に罰金650ドルと1年間の保護観察処分が裁判所から下されたが、驚くことに判決が出る直前の同年5月23日、菅野完は再び同じ女性に暴行し傷害罪で逮捕をされていたのだ。挙句の果てには金を積んで保釈されるとアメリカから国外逃亡。現在は日本で平然と暮らしているが、菅野完は逮捕状が出ている海外逃亡中の身であったのだ。さすがにこれではメディアも菅野完を使いづらくなるだろう。
「菅野完は詰んだ」
 という声もメディア関係者の中では少なくはない。そうして、菅野完は筋もへったくれもない犯罪者だとしてメディアからもインターネット上でも攻撃されていった。
 そう、しばき隊の中心的人物として大活躍し、森友学園問題では安倍政権を揺るがすまで奮闘した菅野完の正体は、とんでもないDV野郎だったのだ。ずばり、単なるロクデナシである。私もそうだが、菅野完のことをとやかく言えるような立派な人間ではない。種類は違えど、弁解しようのない悪行をしてきた。反差別運動以前の問題なのである。でも、私は言いたい。それぐらい、どうしようもない奴がいたのが、しばき隊だったのだと。
 菅野完がどんなに金にだらしなく、女性に対して最低な人間でも、2013年の彼は間違いなくヘイトスピーチを撒き散らす差別主義者にはダメージを与えていた。新大久保コリアンタウンを守る一助となり、東京大行進を成功させる屋台骨となっていた。その足跡だけは、誰にも否定できない事実だと断言しておく。

山口祐二郎
1985年、群馬県生まれ。「全日本憂国者連合会議」議長、「憂国我道会」会長。作家・活動家として活躍。
山口祐二郎公式ツイッター  https://twitter.com/yamaguchiyujiro