考えられない母親と祖母
少年時代から何度とお世話になったことのある伊丹警察署。
元は伊丹に本部があった組織にゲソをつけたのが、私の渡世入りの始まりだったこともあり、尼崎と並んでこの伊丹にも縁がある。
そんな伊丹市内で起きた今回の母、祖母による少女虐待事件。この事件をメディアを通じて知った人々の多くは、激しい憤りを覚えたことだろう。
年端もいかない5歳の少女が、小銭を握りしめコンビニにお腹が空いたとやってきたのだ。
仮に私がコンビニの店員だったら、少女を連れて少女の自宅へと向かい、怒鳴り上げていたかもしれない。
近年、幼稚園や保育園でも言うことの効かない園児に対して、職員や保育士が部屋に閉じ込めたり虐待したりしていた事件がたびたび報じられているが、そういった者たちの神経回路は一体どうなっているのだろうか。
ましてや今回のケースは、血の繋がった我が子ではないか。
どれだけ腹が立てば、実の母親と揃いも揃って虐待などおこなえるのか。
子供が言うことを効かないのは当たり前である。
誰もがそういう子供時代を過ごして大人になってきたのではないのか。
そんな小さな子供たちのことを、何があっても守ってやり大きくするのが最低限の親のつとめのはずだ。
それを虐待。救われない。まったくもって救いようがない。
今回の事件。26歳の母親も悪いが、その母親である47歳の祖母はもっと悪い。47年間どんな人生を送ってきたのだ。娘にどんな教育をしてきたのだ。
40過ぎてのアホはなおらないと言われる通り、ここから心を入れかえて性格を修正させることなど、本当にできるだろうか。
悪いが、私は無理だと思う。
可愛そうなのは虐待を受けていた少女もそうだし、少女の姉や妹も可哀想すぎるじゃないか。
母や祖母が逮捕されたことで、施設に預けられ、もしかすると離れ離れになってしまうかもしれないのだぞ。
生活は聞くところによれば、福祉を受けていたようだが、本人たちの人生よりもどうして子供たちの将来を考えてやれなかったのだ。
5歳にもなれば物心も十分についている。
どうか少女の心の傷が少しでも癒され、成長していってほしい。
あまりにも救われない事件である。
●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)