不夜城を駆け抜けた男、実録インタビュー
藤井学(ふじい まなぶ)
聞き手/花田歳彦 撮影/三田正明
オレオレ詐欺などに代表される特殊詐欺、平成28年度の上半期の警察庁の発表では認知件数6443件で前年度同期より570件減少し、被害額は1984億円と前年度同期より41,8億円減少している。
しかし、問題は地方で減少しているのだが、大都市において増加しているのだ。こんな統計の数字を出しても、本連載で目が肥えている読者の皆様には通用しないであろう。
では、歌舞伎町の阿弥陀如来こと藤井学のインタビューに入る。

警察に泳がされているオレオレ詐欺
──最近のオレオレ詐欺は儲からないのか?
「いや、そんなことはないですよ」
──まだやっていますよね? 色々な方が(笑)
「やってますね、ただ、警察もものすごい予算を組んでる。投資、社債だったり、架空請求とか、欲がからんでるものにはあんまりうるさくない。被害者が欲に絡んで、の場合ですね。
そして一番うるさいのは組織犯罪対策法。普通の詐欺だったら3〜4年で出てきますよ。そこに、組織的な犯罪っていうから、15年とか18年でドーンとなる。でも今は、それが重たすぎるだろう、というのがあるから、刑が多少落ちてきているというのもあるし、あとはどこまでが組織なんだと。
3人1組で30人作って、分割すれば組織じゃないだろ、となるし。うまくやっていかないと。まあ、いまオレオレは百発百中くらいでやられていますね。3年前の事件とか、2年前の事件とか平気で持って来ています、という時代ですよ。
なんでか、っていったら携帯(使用の痕跡)で追うらしいですよ。半径50メートル。それでパパッと張っておけば、すぐわかる。それで内偵をつけちゃう、と。いつでもパクれるけど、金の出所を見たいというだけの話。いつでもパクれるから、あそこはほっておこう、と」
──前の事件を寝かしているような感じですか?
「それはいっぱいあります。だって前の件で札を出せるんですもん。金の行き所が見たいから放置してるだけだと思いますよ。知能犯ですけど、警察には何やったって勝てないですよ」
──それらの主流である藤井さんの考えで半グレとは何を指すのか?
「他団体チームで、いろいろあるのは花田さん知ってるけど、他の半グレのことを言うこともないし、半グレってほとんどないみたいなもんじゃないですか。
で、残って現役でヤクザでがんばってる人とかも、半グレじゃないわけですよね。ヤクザなんだから。任侠道に入ってるわけだし、じゃあ半グレの名前名乗ってやってる人たちって誰がいるの? ていう話になってくじゃないですか。
で、みんなどっかしらでシフトチェンジして現役になるのか、真っ当になるのか、という話だけで。懲役に行ってるやつもいるし。殺人で8年、10年、それ以上。札幌じゃねえ、月形じゃねえ、ていう人もいるし、頭がいなかったらそのグループが終わるのか、というのもある。
ひとつのブランドとして残ってるだけで、事実上なにか起きてるのか、っていったらそうでもないだろうし。シノギもバラバラだろうし」
この後、誌面で書けない話が延々と続くが、個人名などが多数出ているので、公開する事は控える。しかし、決して陰口の一つも叩いてはいない、認めている所はキチンと認めている所が藤井学氏の器量であろう。
──一番最初に戻ってしまうんですけど、博打の話をちょっと。闇スロとか。歌舞伎町の裏の賭博を。
「俺は、赤坂で闇スロをプロデュースしたことがあって、歌舞伎町は激戦区で、仕事を入れたり、サクラがいたり、現状、闇スロをシノギとしてやっている人もいるだろうし、俺らの時代とは違って、9年前くらい、ちょうど闇スロができて、ペヤング? てところ、知ってます?」
──交番の横じゃないですか、ペヤング? 人気店でしたね。
「そっちの、その。で、俺、そこをひっくり返しちゃって。あしべがあったり、100円があったり、40円のがあったり、という感じでやってて。だいたいストック飛ばすんですよ。出ないじゃないですか。
で、これは儲かるな、と赤坂でやって。プロデュースしてやって。エンソがあってやって、で、基本的にはネタをやってる人間がいないと弱いなというのがあって。
俺らは韓国人を相手に集客して、客引きから呼ばせて、というのをしてましたね。なんか出ちゃうし。2300万になって23万アウト、だから1%しか儲からなかったですね。赤字。
じゃあなんか、みんな何かしらあるんだろうと調べれば、初期設定。777回目にスタートができる、とか。変な話、色々な事が出来ちゃう。サクラ、なんかしろ試行錯誤しないと、エンソ払って人件費払って家賃払ってやると、どうなのかな、と。
警察さえうるさくなければいいのかな、とかも。なんせ回数が回らないのは薬物中毒者が少ないからだ、というのもありますよね。パチンコ屋なんかもそうじゃないですか。ポン中なんか多いじゃないですか。ずーっと朝から晩まで打ってるじゃないですか。それは、2〜3時間位しか感じないですから」
──長くいてくれた方がいい、と。
「それはそうですよね。絶対吸い込むんですから、胴元が勝つに決まってますからね、公営でも闇でも」
──長くやればやるほど、平均値に近づく傾向があると。歌舞伎町だと、ノーマル2倍4倍くらいですか。一枚いくらですか?
「40円です。40円と100円ですね」
──色々方式ありますからね、ローカルルールもあるし。
「それこそ今、競馬のゲーム場、これも1枚20円だったり40円だったり。客層で分けてる、高い所だと100円か300円てのもあったし。だからもう、吸い込みですよね。払う方も払って出ちゃっているし」
──出たら、取って帰るですよね?
「でも、飛ばしてるんですよね。ストックを」
──たまに出したりするじゃないですか?
「問屋さんの、機械屋さんが、今の状況ですよ、お金を入れて、当たり台とか全部セットで、要は何とかバージョンとかいうのを何処かの地方とかから仕入れるんだけど、これがだいたい1台20~30万するんですよ。その中に仕込みもいれるし。
実際に自分たちでどうにでもなっちゃいますからね、開店して一週間くらいは出してとか。さっきも言った通り、客が飛ぶようにできているんですよね、それを勘違いして目を充血させて、一生懸命に器械を叩いてる(笑)スロットの方がコントロールしやすい。
インカジはイカサマできないから、客がすべってくれるのを待つだけです。チップの仕入れが20%くらいですから、客が10万入れて2万円がコストですから、あと人件費とか家賃とかですけどね、実際においしいですよ、シノギとしては。それとエンソが安いとかあるんじゃないですか。後は警察にやられにくい。普通のホントのカジノより」
──インカジが普通のカジノに比べて警察も?
「摘発しにくいですね、当然全部地下に潜っているんですけどね」
──捕まえてもポイントが低いんですよね、警察の。あと、従業員が不正をできないじゃないですか。
「オーナーが食われちゃいますよね。いっぱいいますもんね」
──要するに、分かりやすく説明すると街中にある怪しいインターネットカフェがインカジですよね?
「ですよね。だけどね、やっぱりポン中がいないじゃないですか。やっぱり、ポーカー屋もすごかったじゃないですか。ほんとそれだけですよね。いかにそういう客を引っ張り出すか」
──ポン中がいないとゲーム屋がなりたたないですからね。
「そうです。闇スロ屋もそうじゃないですか。どっからでも引っ張ってきて、ずーっと打ってるわけですよ。出ると信じて。次に連チャンすると信じて。
妄想に走ってる訳ですよ。でも、ポン中が安心して歩けた街じゃないですからね、東京は」
今回は藤井学氏がひとつのシノギとしていた闇スロのほんの一部を書ける範囲で書いた。
次回もこのような話からスタートする。