不夜城を駆け抜けた男、実録インタビュー
藤井学(ふじい まなぶ)
聞き手/花田歳彦 撮影/三田正明
読者の皆様新年あけましておめでとうございます。
この原稿を書いているのは2016年の12月だが、今年の12月は今までと少し違う感じが正直している。この時期になると金のない不良は年越しの金に焦り、色々な悪さをする。「捕まってもいい」と何が何でも金を作りに走る。強盗など、不良の看板を掲げていたら絶対にご法度な事件も数件起きているが、それでも例年に比べると少ない方と思うのだが。諸条例で締めつけが厳しくなり本当に表に出て来れないか、うまく一般人に紛れてシノギをしているかのどれかであろう。
不良の世界では歌舞伎町はある意味ステータスである。ここで遊べれば一人前という世界である。これが普通の社会人であれば銀座であろうが、やはり不良の世界では歌舞伎町だ。はじめは頭を下げてばかりいる、それはほとんどが先輩ばかりだからだ。それが日を重ねるうちに、頭を下げるのが五分五分になり、最後は頭を下げられる身分になる。しかし、その身分になったら改めて今度は自分が周りに頭を下げる人間になるのだ。それが意識をせずできて「あの人は凄い」といわれる人間になる。実際にそのような人は歌舞伎町だけではなく、全国に大勢いるであろう。
それでは、本年最初の藤井学氏のインタビューである。

ミカジメ、警察との関係
──歌舞伎町のシノギについては何回も聞いてますが、色々あり過ぎる、それは歌舞伎町だけではなく裏社会にいる人間がそうですよね。
「歌舞伎町ならではのシノギといえば、たとえばホストの面倒を見たり、スカウト会社の面倒を見たり、カスリ、基本的な仕事ですよ。カタギの人からカスリをもらってやってく。博打開いたりとか。そういうのが基本じゃないですか」
──守りというか、ホストクラブの?
「そうそう、面倒見。面倒見っていうのが基本的にはヤクザ。カタギの人を助ける。そういうのが基本ベースじゃないですか。でも、他団体が入ってくる。お金を使いにくる、飲みにもくる。付き合いにもくる、食事にもくる。その人たちは地場でシノギもしてるし」
──カタギの人を助ける、というのはヤクザ側の視点ですよね?
「そうですね」
──カタギからすれば、ヤクザに食われちゃってるっていう見方ですよね。
「そりゃそうですよ、だけど組織によって誰に面倒を見てもらうのか、と言うのはありますよね、カタギを食っちゃう人に面倒を見てもらったらそれは食われちゃうし」
──ミカジメって昔からありますが、キチンと守って下さいよ、という意味合いもあれば、頼むから店に顔を出さないで下さいよ、その代わりおしぼり付き合います、絵画レンタルします、と言うのもありましたね(笑)一番いいのはその組のトップの人に頼めればいいけど、そこには当然辿りつけない。
「まあ、大概行けないですね、そうなるとじゃあ、三下のヤクザ、自分が面倒を見れない、そうすると組の看板からカスリをとる、昔なんかそうじゃないですか。キャッチとか、3万だとか5万だとか、スカウトマンも「お前月額でやるか」とか。いろんな人がいるし」
──今、キャッチからはいくらとってるんですか? 分かる範囲で。
「それもちょっと、ヤクザも頭を変えて、自分で直接繋げちゃっているから、いくら取るというよりも、グループ化しちゃってるのが多いんです。
俺が全面的に面倒を見てやるから、その代わり入れる店舗も俺の付き合いのあるところにしろ、とか、そうなってきているから、たとえば1人立って3万、とかそういう時代じゃない。グループもすごくでかいのがあるし。大きいとこがケツをもってるのが、ちょうど何でしたっけ、ドンキから入って行く道のところ、そこが一番イケイケで今は。今は、ですよ。
あそこ、イケイケで立ってるんですよ。車で行くとどかないですもん。どけよって、轢くふりして、ブワーッと入っていくじゃないですか、ゴジラの方に向かって。で、トラブルになって、ケツがどこでてくる、となったときに、あああそこね、と」
──藤井さんがゴジラ、っていうとゴジラというネタを食ったみたいですね(笑)
「いやいや(笑)。あの頃のゴジラでもなんでも、湿ってても、パァーッッッッって、タバコより吸わないと、効かないんですもん」
──表立って歌舞伎町の商店会というか、振興組合があって、某有名ホストクラブの会長が率先して歌舞伎町をきれいにしましょうって、やってましたよね
「あの人、率先してヤクザと付き合ってますよね」
──ですよね、でも、表向きにはそういう風にやってたりとか、だから、そこはもう避けて通れないということですか。
「そりゃそうですね。昔は。だってガタガタにされたら終わりじゃないですか。「お前、誰に面倒見てもらってるんだ」って。店がオープンすればみんなヤクザがパーっと行く街だったじゃないですか」
──一番に来た人間がシノギを取るわけですからね、歌舞伎町は
「そうですね」
──歌舞伎町の人たちと警察との関係、というのが気になってて
「みんな担当者と付き合いをしたり、個々につきあいをしたり、1回の逮捕で担当の刑事を男とお互いが認めて付き合いをしたり、あいつらも男だから俺も本庁と付き合いがあるし」
──たとえば平たく付き合いというと、普通に飲みに行ったりとか?
「ありますね。俺の場合は本庁の人間、警部に上がったのかわからないですけど、この間も電話したけど、向こうは絶対2人で来ないといけないんですけど、俺らは2人だけで游玄亭で飯食っちゃうし、若いのには「下で待っておけ」とさせて。ボディーガードがつくじゃないですか。2人っきりで飯を食っちゃうし。「元気か、シャブやりたくなったら電話してこいよ」「やんないっすよ」まあ、いろんな情報交換じゃないですけどね」
──向こうも情報のない人間とは会わないから。電話にも出てくれないですからね
「そうですね、自分の知り合いなんかはズブズブの人間大勢いますよ、付き合うなというのは建前であって、本当は情報が欲しいから付き合うし。チンコロするやつなんかもいっぱいいるし、ケツ割って出てって組織のことを語るやつもいっぱいいるから」
──昨年(一昨年)の分裂の際に、兵庫県警、大阪府警、警視庁、愛知県警の情報収集能力の差が出ましたよね。
「会社が違うし、それぞれ付き合ってる人が違うから当然ですよね」
読者の方は藤井学氏の人物像と共に各組織の色々な話を聞きたいだろうし、当然色々な組織の裏話になったが、そこは本連載と関係ないので割愛させて頂く。
ちなみに一番ズブズブで情報が取れなかったのは某県警である。
次回は今の半グレを含めたシノギに付いて触れていこう。