>  > 日本の裏社会を語り尽くす! 究極対談「藤本勝也弁護士☓真鍋昌平(マンガ家)☓柴田大輔(作家)」
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日本の裏社会を語り尽くす! 究極対談「藤本勝也弁護士☓真鍋昌平(マンガ家)☓柴田大輔(作家)」

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ロースクールでは学べないリアルな弁護術


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wikipedia「警視庁」(リンク


藤本 確かに多いときは、それは東京都内だけでしたけど、一日で十何人面会したことがありますよ。こうなるともう早朝から夜遅くまででね、最近はさすがにウチの若い弁護士たちにも分担してもらってるけど、実は今日もここに来る前何ヵ所か回ってきたところで、それはもう肉体労働ですよ(笑)。それとね、被疑者が不安になったり心がぶれないようにってのも大切なんだけど、別の側面もあってね。

真鍋 別の側面?

藤本 うん。ゲームって言ったら叱られるかもしれないけど、やっぱり攻撃と防御はあるんでね、警察・検察と我々の間には。ひとつには黙秘権ってあるでしょう? それを行使して少しでも有利にやっていこうっていうのが弁護士なんですね。だから世間では人権だ何だって言うけど、基本的には依頼者の利益を守るのが我々の仕事なんでね。だから最初はとにかく黙秘させないといけない。安易にしゃべっちゃうと、たとえば共犯が何人かいた場合なんか、証言がバラバラになっちゃうでしょう? そうすると敵はそこを突いてくるから。だからまずは「とにかく黙秘しなさい」と。そのうち弁護士には相手の手の内が見えてくるんだから。警察や検察も言い出しますよ、「先生、もういい加減しゃべらせてくださいよ」と(笑)。するとこっちも「じゃあ、どのへんで取り調べ打ち切ってくれるの?」なんて、交渉ごともあったりするけど、まずは黙秘。依頼者の立場に立てばそれが最良。さっき柴田くんが言ったように、捕まった人間ってのは放っておいたら不安になって何言うかわからない。一度証言したことはもう撤回出来ませんから。だから弁護士はとにかくマメに面会に行くことなんですね。

真鍋 そういう戦略の立て方って、やはり経験から編み出されるものてすか?

藤本 そうですね。たとえばね、あるとき初めての被疑者に面接に行ったんです。そうしたら、私が来る前に当番弁護士(逮捕直後、被疑者やその家族・知人からの依頼があればすぐに日弁連から派遣される弁護士のこと)が来たという。容疑は器物破損。酔っ払って飲み屋の看板かなんかブッ壊しちゃった。本人、泥酔してたから覚えてないんですよ。あのね、器物破損なんて親告罪だから、取り下げさせればいいんです。ところがその当番弁護士は「酒飲んで記憶がないんなら、自分はやった覚えありませんと言いなさい」とアドバイスしたという。「冗談じゃない、ちょっと待て」と私は言った。シラフの人間が被害受けたと被害届出してるんだから、否認なんてしたら勾留は長びくわ、下手すると接見禁止食らうかもしれない。だから「やった覚えないなんて言うな」と。その男はちゃんと仕事もしてるし家もある、実家の両親もちゃんとしてる。「責任もって弁償しますと言えば、釈放されて弁護士と一緒に家まで連れて帰ってやれるかもしれないんだよ」って。

柴田 当番弁護士はそれを知らなかった?

藤本 うーん、知らなかったのかバカなのか(笑)、まあ、成り立ての若い弁護士でしょうね。つまりさっき黙秘権と言ったけど、これは使っていい場合とダメなときがあるんでね。そんな飲み屋で何かブッ壊したような、そんなクズみたいな事件は必ず出られるんです。前科があったりしたら別ですけどね。そうじゃなければ必ず出られるんだから、48時間の勾留期限の間で、まず出してもらうことを考えようと。

柴田 黙秘権を行使することで逆に不利な立場になってしまうこともあるんですね。

藤本 そう。その男は「あのう、僕、どうなっちゃうんでしょう?」って聞くから、「お前、今僕が面会してるけど、自分の手を見てみろ。手錠が付いてるだろう? それは警察が被疑者を家に帰さないって意味なんだよ。だから明日もまた『知らない』『記憶がない』なんて言ってると、『じゃあ接見禁止付けようか』となっちゃうぞ」って。

真鍋 警察も人間ですもんね。被疑者は黙秘してるつもりでも、「この野郎、トボケやがって!」となっちゃう。


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wikipedia「検察庁」(リンク


柴田 先生は当番弁護士やらないですよね?

藤本 やんない、やんない、そんなの。

柴田 でも以前言ってませんでした? ペナルティで何万円か払ったって。

藤本 そうそう。国選とかはやんないとペナルティ5万円払わされるんだけど、じゃあ払うからやんないよって(笑)。

真鍋 それは国選弁護人の仕事を受けないと払わなきゃいけない?

藤本 ええ。登録制だから、しないと5万円取られる。ところがさっき言ったように今は弁護士の数が過剰でしょう? だから仕事のない若い弁護士は当番弁護士の日当1万円とか、国選弁護の2万円とかでも欲しいんですよ。昔は当番弁護士なんて誰もやりたがらないから、事務局が「受けてください」ってお願いして回ったもんだけど、今は弁護士の方が並んで順番待ちしてるような状態でね。

真鍋 くじ引きで決めるって話を聞いたことがありますけど?

藤本 みたいですね。それだけ仕事に困ってる若い弁護士が多いんでしょう。まあ、そうやって事件に真面目に取り組んで勉強してくれるのはいいんだけど、さっきの例のようにやり方がね。実務の問題ですから。弁護士は勉強だけの、机の上だけじゃないからね。