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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 新章第36回 罠にハマったピカロ

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新章「サイバーアウトロー」連載第36回 罠にハマったピカロ


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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あらすじ
犯人の詐欺師2人をハメるべく、行動を開始するが......


「よ~し!シメのラーメンいこう、ラーメン!」
 オレと鹿児島は池袋で飲んで、2人は酔っぱらったまま演芸座通り近くの公園脇をヨタヨタと歩いていた。

 だが実際は、生ビールを3杯ほど飲んだだけだから、本当に酔ったわけではない。

 ただ坂田からの報告書で、品川がこの付近に待機している援デリ業者とツルんでいる事実を確かめたかったのである。

「ねぇ、師匠。あれ、あれ品川じゃない」
 鹿児島はオレの肩に手をまわし、耳元でサラッと囁いた。オレは目を細め、鹿児島の指示した方を見た。

 ボロいホンダのステップワゴンが、公園脇の路上に停まっている。

 その横に、缶ビールを持った品川とツレがいた。おそらくは、この事件のキーパーソンとなる安保義行だろう。

 沖縄出身にすれば色白で、どこかしら国民的アイドルグループSMAPのリーダーの中居正広に似ている。

 オレは頭の中で思い描いていた安保像と、かけ離れている実物を見て坂田の調べは大丈夫なのだろうかと、少々不安を感じていた。

「先生。話しかけようぜ」
 オレは積極策に出ることにした。

「う、うん」
 鹿児島は戸惑ったように答えた。

「あれ、アンタ......品川さんじゃないの」
 オレは鹿児島を放っておき、自分から品川たちに近寄った。

「あ、あぁ......ども。三井さんスね」
 品川は、明らかに動揺したかのように見えた。

「こんなところで、なにしてんスか」
 品川は天然の詐欺師だけに、人を徹底的に探るような目つきでオレを見る。いや、勘ぐるといってもいいのかもしれない。

「いや、今日はさ。この鹿児島ちゃんと、飲んでいたんだよ。ところで、アンタら。こんなところでなにしてんの」
 オレは呂律が回らないような口調で、品川に尋ねた。少し、クサい演技だったかもしれない。

「なにやってるって......仕事ですよ、仕事」
 品川は、平然としたような態度で返す。

(なんか、不自然だな)
 オレもピカロの世界に入り、10年近く経つ。身に着けた、危機察知能力は常人より優れているはずだった。
 そして、ニコニコ笑って缶ビールを飲む安保に向かって、品川は、目配せを送る。その一瞬を、オレは見逃さなかった。

「あぁ、そうなの。じゃあ、しっかりお稼ぎ。先生、もう一軒いこう、もう一軒!」
 オレは鹿児島に声をかけて、その場を去った。少し離れたところで振りかえって品川を確認すると、どこかに姿を消していた安保が彼の横に戻っていた。

 そして、品川に銀行の封筒を渡していた。

 一瞬のことであったがオレは2人の動向を見て、ヤツらがクロであることを確信したのである。