僕は暴走族関東連合の昭和54年世代の最恐とは言われていたが、最強ではなかったと思う。当時、僕の同世代で、僕に歯向かってくる者など一人もいないくらいそれは絶対的な位置づけだったが、世代を問わずに自分が最強と思ったことなどは一度もない。
S?DA先輩しかり、東京喧嘩最強の男・谷山君、西新宿撲殺事件で亡くなられた異形とも言える筋肉を身にまとっていた金村君、他にも最強と謳われる歴代のファイターは何人もいたが、僕はその人たちに勝てると思ったことは一度もない。
実際、谷山君には3度挑んで、3度とも一撃でのされている。
僕はその当時いつも考えていたのだが、最強対最強と言われる彼ら歴戦の猛者たちが直接衝突したらどうなるのだろうか?
それこそ東京に限らず、千葉神奈川を含めた最強のデスマッチ。
しかし、最強と言われる人たち同士が直接衝突することはなぜかなかった。
お互い逃げているわけでもないし、あえて避けているわけでもない。
何か目に見えない力学のような引力が、彼らの衝突を避けているようにしか思えない。
衝突したら、やられた方のプライドとともに不良社会の大きなパワーバランスが崩れて変化するのだろうか?
これは生物学上の絶滅を避けるための法則のようなものが働いているように思えてならない。最強の遺伝子がぶつかることでどちらかが淘汰されることは、遺伝子学上の優秀な遺伝子が繁栄していくという法則に反する。
そしてもう一つ、最強の遺伝子がどこかの地域で生まれると、シンクロするように同時期に他の地域でも最強の遺伝子が生まれるという傾向がある。
関東連合は強いグループではあったが、決して最強や一番と言えるグループではない。
怒羅権や千葉、神奈川のグループ、ひいては関西に至るまで、同世代で最強と言われるグループは、関東連合と時期を同じくして、それぞれの地域で発展して行った。
まるで、現代を生きる戦国武将の話のようだが、僕はこれこそ食物連鎖の法則であり、人間界においても自然界の定めのように思えてならない。
人間社会はあくまでも競争社会だと僕は思う。
ビジネスにおいても、格闘技においても、学問においても、芸術においても、だ。
では、僕はこれからどんな最強を目指すのか?
それはまだ未定である。
柴田大輔
これまで「工藤明男」のペンネームで活動してきたが、本作で初めて本名・柴田大輔を明かす。東京都杉並区出身の関東連合元リーダーで、ITや芸能の分野で活動後、複数の企業の筆頭株主として投資と企業コンサルタントを主な仕事としてきた。警察当局からは関東連合の最大の資金源と目されてきた人物。処女作『いびつな絆 関東連合の真実』(宝島社)刊行と同時に、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)における保護措置により保護対象者に。同書は17万部のベストセラーとなる。2014年には『いびつな絆』の"少年編"と銘打った2作目『破戒の連鎖 いびつな絆が生まれた時代』(宝島社)を刊行。現在は執筆活動を中心にしながらアプリゲーム『Black Flower』『大激闘! 不良の花道』(TOR株式会社)などを開発・運営している。