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『聖域 ~関東連合の金脈とVIPコネクション』 ヒット記念書きおろし特別エッセイ 「最強とは何か?」

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wikipedeia「渋谷センター街」(リンク


 成人後、一度だけ太一たちの引退集会に付き合ってもらったが、起業してから会ったのは、この日のセンター街が初めてだった。

「こんにちわっす」

 社会人になっても、暴走族時代の先輩には、不良特有の挨拶の仕方がある。

(面倒臭え先輩に会ったなぁ......)内心、そう思ったが、当然口にも態度にも表わせない。
 
「大、最近何やってんだよ? 連絡先教えろよ」
 
「今は真面目に仕事やってます。携帯番号は変わっていません」

 僕はそう答えるのが精いっぱいだった。

 キチガイキャラは何をするかわからないから恐れられるものだが、逆にキチガイキャラは正当な武闘派のタイプには意外と弱い。だから、他の地元で恐れられるキチガイ系のキャラの相手には逆に「タイマン張れ」と正攻法で対抗すると、逆に相手が怯んでこちら側が優勢になったりすることがある。

 しかしS?DA先輩はキチガイ系のキャラでも僕にとっては暴走族の原体験となるモデルケースのような先輩で、先ほどのようなチンピラ相手の喧嘩以外にも様々な暴力的シーンを見せつけられてきた。その刷り込みがあって、僕には逆らうことがもっとも躊躇される先輩として位置づけられていた。

「大、ちょっと金が必要だから。近々連絡するから、いくらかまとまった金用意しておいてくれよ」

「あ、いや、はい、ちょっと会社始めたばかりで金は無いです。」

「じゃあ車でもなんでもいいから用意しておけ。連絡するから必ず出ろよ。」

 そう言い残して、再びおもちゃのような自転車で「キコキコ」と過ぎ去って行く後ろ姿を凝視しながら(ここで関係を清算しない限り、いつまでも真面目に仕事ができないな......)と心の中でそう思った。

 成人になって肉体的な差もなくなり、その気になればやり合って勝てる可能性もあるかもしれない。しかし、S?DA先輩の粘着質な性格を考えると、どのような仕返しをしてくるかわからない。そうなると真面目にやるどころか、争いの連鎖に再び舞い戻るだけだった。

 悩んだ末、別の先輩を通じて「真面目にやるんでもう関わるのは勘弁してください。連絡も出る気もないし、金とかそういったものも一切渡す気はないです」そう伝えてもらった。

 最初は「俺と大の仲はそんなんじゃないだろ」と不満げにしていたそうだが、「真面目にやる」という言葉に心が離れたと思ったのか、それとも警察に駆け込まれるのを恐れたのか、それ以降S?DA先輩から連絡がくることはなかった。