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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 新章第33回 援デリ業者VSピカロ

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新章「サイバーアウトロー」連載第33回 援デリ業者VSピカロ


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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あらすじ
相棒の鹿児島から膨大な顧客データを持つという援デリ業者・品川を紹介された三井だが......

「それじゃ、これ......」
 援交デリの経営者である品川が、オレにフロッピーデスクを渡した。

「わかった。で、これは、どのくらいの前から集めたデータなんだ?」

 データを仕入れる上で必要なのは、それがいかに新しい生きたデータであるか否か、だ。いくら件数ばかり集めても、死んだデータは必要ない。適当に作った偽装アドレスや、すでに変更されているデータなど売った日には信用問題になる。

 ましてや、開業したばかりのオレの会社、『スマイルカンパニー』の沽券に関わる。

「はぁ、およそ7~8年前からっスね」
 品川は、強面の顔をオレに向けていった。

「本当か? 一番古いアドレスは、10年ぐらい前じゃないのか」
 オレは品川に問い返した。

「いや、5年ぐらい前のですかねぇ~」
 品川は、オレの目を見ないで携帯をいじっている。

 おそらく、ヤツの仕事用の携帯なのだろう。2、3分おきに、テーブルの上に置かれた携帯が音を立てて震えている。

 人の目を見て話さないヤツは信用するな、が鈴彰の教えである。確かに、彼の訓戒は的を射ていた。

「品川さんよぉ。オレはアンタと、ビジネスの話をしにきてるんだ。なのに、肝心な話の最中、携帯をいじってるってなんなんだよ」
 品川は、オレの言葉にギクッと顔をあげた。

 現代もガラケーからスマホに機種変更がなされ、SNS大好き世代が会社の会議や、顧客の接待中であっても携帯をいじっているということが、社会問題となっている。

 だが、今から10年ほど前は、そこまでヒドいヤツはいなかったのである。この品川こそ......いや援交デリ業者こそが、のちの『歩きスマホ』となる若者の元祖となるのではないか、とオレは思う。

「そんなに自分の仕事が気になるなら、事務所でも自宅でもいい。帰ってサクラに精を出せよ。オレは、アンタみたいないいかげんヤツとは取り引きできんな」

 オレはテーブルの隅に置かれた伝票をとって、サッと立ちあがった。

「10円でいいっスよ」
 品川が、立ち上がったオレに向かって口を開いた。