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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 新章第32回 出会い系サイトの男

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新章「サイバーアウトロー」連載第32回 出会い系サイトの男


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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あらすじ
ある日、相棒の鹿児島から三井は呼び出されたのだが......


「ここらに置いていいですか」
 秋葉原で探して買った新型のパソコンを、荒々しくデスク上に置いてパソコンショップの店員は言った。まだ午前中なのに赤いチェックのシャツには汗染みができ、髪は脂で汚れている。オレはそいつが家に上がろうとした時点でイライラしていた。

「おい、設定していかないのか」
 商品をドーンと置くだけおいたら、サッサと帰ろうとする店員に向かってオレは言った。

「えっ、初期設定もできないんですか? 設定は追加オプションになりますけど」
 店員の人をバカにしたような態度に、オレはキレた。

「おい! テメェ、人をナメてんのかぁ。パソコンの初期設定ぐらいできらぁ。客に対して、なにエラそうにいってやがんだ。配達したら、テメェの仕事は終わりなのかよ!」

 インターネットの時代がくることは、以前から予見していた。だから、パソコンは人より早くから勉強していて、誰よりも詳しいつもりだった。ただ、インターネットが社会に普及して以来、部屋に引きこもってパソコンでゲームをしたり、チャットで現実の女かどうかわからない存在に夢中になったり、掲示板に匿名で言いたい放題書きこんだりする、いわゆるネットオタクという人種が世間の注目を浴びていた。

 彼らはリアルな人との付き合いを嫌い、ネット上でのやり取りで交友関係を構築するという新人類だった。この店員も、その手の人種のようにみえた。

「すいません、すいません......」
 店員は、泣きださんばかりだった。

「もう少し、礼儀ってものをしれ! それと、お客さんに対する言葉づかいにも気をつけろ、いいな!」
 オレは、イラつきながら店員にいった。

「は、はい」
「もういいから、帰れ! 設定はオレがやる!」
 店員は、ホッとしたような表情を浮かべた。そして、足早に出口に向かっていき、大きな音を立てドアを閉めた。

「オタク野郎め」
 オレは苦々しげにつぶやき、鹿児島との待ち合わせ場所に急いだ。