柴田大輔と、酒鬼薔薇聖斗と
注目すべきは、主要な登場人物である元少年A、見立真一、柴田自身をサイコパス、性的サディズムという心理学的なアプローチで探求している点である。
元少年Aについては、事件の残虐性、特異性から精神病質が原因であると容易に想像できる。しかし、見立真一の暴力性が病的なものかどうかは、本人を知らないので分からない。
本書では、柴田大輔自身、自分がサイコパスではないかと自己分析している。だが、彼のことを理解している私には、それは違うと断言できる。彼は少年時代の貴重な時間を、少年院で無駄に過ごしたという後悔から、その原因を追求し、サイコパスという可能性を見つけただけだ。
そして、「絶歌」が刊行されると、著者である元少年Aとコンタクトを取り、メールでのやり取りを始めた。まるで、自分との共通点を探し少年Aを理解することで、何かを解決しようとしたかのように。少年Aとのメールによる会話は、本書の後半で公開しているが、確かに文章も上手く、そこからは異常性など微塵も感じられなかった。
「絶歌」の出版にあたっては、多くの賛否両論があった。だが、是非はともかく、その内容も読まずに批判するのはおかしい。そういう意味では、柴田大輔による「酒鬼薔薇聖斗と関東連合」は貴重な解説であり、書評でもある。
一気に読み終えた後、柴田大輔に、なぜ本書を書いたのか聞いてみた。
「少年院に収容されている時に事件を知り、元少年Aに興味を持った。『絶歌』を読んで衝撃を受け、自分なりに彼を探求したくなったのです」
私の推測だが、柴田大輔は自分自身を追求する材料として、酒鬼薔薇聖斗を選んだのだろうと思う。同じ少年事件の加害者として、何か共通点や類似点がないものか、と考えたのだろう。
それは、柴田大輔の失われた少年時代を、取り戻すための作業だったのかもしれない。
「結局、『絶歌』では、一番重要なことが語られてはいませんでした。元少年Aが書かなければならないのは、なぜ事件を起こしたのか?ということです。最後まで、それは分からなかった、私には、彼を理解することは出来ませんでした」
「絶歌」は読まなくても、「酒鬼薔薇聖斗と関東連合」を読めば、事件のバックグラウンドと、元少年Aを知ることが出来る。ただし、読後の感想は、重苦しい。
(文/猫組長)
猫組長
神戸生まれ。若くして反社会組織に身を投じ、仕手戦やインサイダー取引を経験。タックスヘイブンにも複数会社を保有しており、現場に精通する。
twitterはhttps://twitter.com/nekokumicho?lang=ja
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ベストセラー『いびつな絆』の著者が、少年院でのトラウマや関東連合での活動を重ねながら、『絶歌』に潜む暴力性や死生観を解読。
そして、元少年Aとの対話が始まったが......。
「酒鬼薔薇聖斗」は関東連合元リーダーで国際指名手配犯・見立真一と同じく性的サディストか? あるいはサイコパスか?
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