
猫組長のtwitter アカウントは@nekokumicho
オモテとウラの経済に精通し、タックスヘイブンからネット炎上の話題まで切れ味鋭く呟くtwitterが大人気の猫組長。そんな猫組長が話題の一冊『酒鬼薔薇聖斗と関東連合』を解読する。4万4千人の猫組長フォロワーは必見!(R-ZONE編集部)
見立真一と、酒鬼薔薇聖斗と
柴田大輔は実名よりも、元関東連合・工藤明男の方が有名だろう。私は関東連合という組織もそうだが、作家として活躍する「工藤明男」に以前から興味があった。
初めて彼に会った時、イメージとはかけ離れた、礼儀正しく非常に常識的な人間性に驚いたものだ。それからは、頻繁に会う仲となり、雑誌での対談を行うなど、今では公私ともに気の合う友人となった。
そんな柴田大輔が「酒鬼薔薇聖斗と関東連合」という、重いテーマのノンフィクションを書いた。題名に「関東連合」とはあるものの、実質的には元関東連合リーダー・見立真一と、神戸連続児童殺傷事件の犯人、酒鬼薔薇聖斗こと元少年A、そして、柴田大輔本人が題材となっている。
柴田大輔が神戸連続児童殺傷事件に興味を持ったのは、柴田自身も少年院に収容されていた時である。あまりにも残虐な事件を、自分と同じ少年が起こしたことに衝撃を受け、関連書籍を読み漁ったという。きっと彼は、元少年Aと自分に共通する「何か」を感じ、比較分析することで、その「何か」を解明したかったのではないだろうか。
また、元少年Aに興味を持った理由の一つに、彼の文章力に驚いた、と書いているが、それは、柴田自身に高い文章能力が備わっていたからであろう。
昨年6月、酒鬼薔薇聖斗は元少年Aというペンネームで「絶歌」という手記を発表した。柴田大輔はこの「絶歌」について、出版の是非はさておき、作品として一定の評価を与えている。もちろん、それは元少年Aに理解を示したわけでも、「絶歌」の出版を肯定したものでもない。
柴田大輔は、犯罪を犯す「普通の少年」と「不良少年」の間にある、共通点と差異について疑問と興味が尽きず、それらを追求せずにはおれなかったようだ。
「酒鬼薔薇聖斗と関東連合」は「絶歌」からの引用を、柴田自身の経験と知識に基づいて通釈したものが、構成の中心になっている。
題名を見た時には、なぜ元少年Aと関東連合なのか?と感じたが、読んでみると、それも納得した。関東連合は、柴田大輔の少年時代そのものであり、彼のアイデンティティーが今も幽霊のように彷徨っている場所なのだ。
柴田大輔は関東連合の呪縛から自分を解き放つために、筆をとり戦ってきた。その背景には、彼自身が少年時代に犯した罪への贖罪の意味もある。だからこそ、元少年Aと関東連合を、少年犯罪というテーマで書きたかったのではないだろうか。