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新章白熱! 東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第31回 カネのなるフロッピー

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「以前、田村利行というパチンコに狂った社会保険労務士に、5万円を個人的に貸したことがあるんだ。明五(あけご)(=翌日五割の金利)で貸したんだが、バッくれやがったんだ。で、3日後。田村の事務所に取り立てにいってやったんだ」
 鹿児島は、真剣にオレの話を聞いている。

「事務所に取り立てにいったときは、ヤツは飛び上がらんばかりに驚いたね。明五とはいえ、5万円で2万5千円の金利だ。3日分溜まっているから、金利だけで7万5千円。元利金あわせて、12万5千円だった」
 博打でタネ銭が尽きると、借金をするヤツが多い。負けて熱くなっているから、冷静な判断ができなくなっている。

 だから、明五という異常な高金利にでも手を出してしまうのだ。

「もちろん、パチンコみたいな公営ギャンブルでも、5万円ぐらいは数時間で溶けてしまう。そんなヤツに返済能力はない。田村は月末まで待ってほしいと、土下座をしやがったんだ」
 鹿児島は、なにがいいたいんだと困惑の表情でオレを見ている。

「もちろん、オレは断ったさ。だったら、金目のモノでもないのかとオレは田村を追いこんだ。そして、事務所内を見まわしてみると、パソコンがある。オレは、パソコンを売ろうと考えたんだ」

 当時、ハイエンドのパソコンは30万円以上した。十分、借金の形(かた)に充当できる。

「田村は、こればかりは勘弁してくれと泣きだしやがったんだ。そのかわり、貴重なデータを差し上げますといって、フロッピーを差しだしたんだ」
 そのころ、オレはパソコンのイロハも知らなかった。まして、フロッピーがなにであるかも知らないほどだった。

「田村はパソコンにフロッピーを入れ、大きな旧型のディスクトップ上に現れた画面を指さした。なんだったと思う」

 オレは、鹿児島に尋ねた。

「さぁ?」

 鹿児島は首を傾げた。

「社会保険未納者のリストだったんだよ。田村は業績不振に泣いていた。そこで、どこからか社会保険の未納業者のリストを手に入れ、不良業者に連絡して仕事を取ろうと計画していたんだ」

「あっ!」
 鹿児島は、思わず声をあげた。

「社会保険を払えない業者......つまり、社会保険さえ支払えない、経営不振な業者。オレたちのような金融業には、ノドから手が出るほどほしいリストだね」

「そう!」 
 オレは大きくうなずいた。

「結局、このリストをもらうことで、3日間の元利金12万5千円をそのまま据え置きにして、支払い期日を月末まで待つことにしてフロッピーを取り上げたんだ」

 このリストは、その年の年度末のもので、データとして新しいものだった。

「おかげで、貸し付け額が異常なほど伸びたんだ。このとき、オレは情報の重要性を認識した。そして、いつかデータが売買される時代がくる。オレの深層心理に、このときの経験が根強く残っていたんだ」

 オレはデータ屋を開業するに至った経緯を鹿児島に説明した。鹿児島は、納得したようにうなずいた。

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-to be continued-   

※写真はイメージです