強姦致傷という罪への起訴が減っている理由
8月23日に「強姦致傷」という罪状で逮捕された高畑裕太容疑者(22歳)の件について、おそらくどなたもご存知ないデータを明かそう。
高畑容疑者は今後、検察官により「公判請求(正式な裁判への起訴)」をされるか、「不起訴」とされるか、どちらかになる。
「強姦致傷で不起訴なんてあり得ないだろ!」と世間は怒るかもしれないが、それは十分あり得るのだ。
法務省が作成した「検察統計」に「罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員」という表(交通事故と違反は除く)がある。要は起きた事件の統計記録だ。
そこから、「強姦致傷」を含む「強姦致死傷」について、2015年の公判請求と不起訴の人員を抜き出してみよう。参考のため2006年と比較してみる。
【強姦致死傷】
[2006年]
公判請求=253人
不起訴=110人
[2015年]
公判請求=104人
不起訴=87人
ご覧のとおり、不起訴はけっこうあるのだ。
というか、公判請求が異様に減っていることに驚く。
近年、犯罪の発生が全体的に減少傾向にある。「強姦致死傷」にいたっては253人から104人へと約6割も減っており相当に異様だ。なぜか?
その原因として、2009年5月に施行された「裁判員制度」が挙げられる。
「強姦致死傷」は裁判員裁判の対象事件。そもそも裁判員裁判はめんどうなうえ、素人裁判員の好奇の目にさらされるのを被害者は嫌がることがある。そのため検察官が「強姦」で公判請求することがあるのだという。
そういうのを"罪名落とし"という。
「強盗致傷」も裁判員裁判対象事件であり、「窃盗、傷害」に落とされることがある。
重い犯罪をやったのに、裁判員制度のおかげで罪名落としの恩恵を受け、ラッキー、という者が少なからずいるようだ。
とくに高畑容疑者の場合、「致傷」の部分は手に軽いケガをさせた程度だという。
また、テレビ等でさんざん叩かれたことは「すでに重い社会的制裁を受けた」として有利な情状になる。
そんなことから、「強姦致傷」ではなく「強姦」で公判請求されることはあり得るのだ。