「シャブのない人生なんて生きてる意味がねえんだよ!」
フィリピンはルソン島北部の中心都市バギオ。
コルディリェラ山系、標高1500メートルの高地にある常春の避暑地で、例年三月から五月にかけて大統領府等政府機関が移転してきて首都機能を担う。
6月30日に就任したロドリゴ・ドゥテルテ新大統領も、来春はこの地に滞在することになるだろう。
ドゥテルテは七期にわたるダバオ市長任期中に、東南アジア最悪といわれた南部ミンダナオ島の国内第三の大都市・ダバオの治安を、彼曰く「東南アジアで最も安全な町」へと劇的に改善させ、経済発展をもたらした功績と圧倒的実行力で国民に支持され、第十六代フィリピン大統領の座を手にした。
しかしその手腕には毀誉褒貶がある。ドゥテルテがダバオを〝鎮圧〟した方法とは実に荒っぽいもので、彼自身が私設軍隊「DDS(ダバオ・デス・スクワッド=ダバオ死の部隊)」を組織して、麻薬組織など犯罪勢力を私刑による大量殺人で次々と壊滅させるという超法規的なものだった。
アムネスティ・インターナショナルは、1998年から2008年の間に千人以上が彼らの手に掛かって殺害されたとして、ドゥテルテを国際的に告発している。
それでも新大統領としてはダバオで成功した豪腕を全国的に振るい展開していく方針である。とくに麻薬問題には積極的に厳しく当たる決意で、国家警察へ麻薬犯罪者に対する射殺を指示、報奨金付きで奨励している。この発表は効果覿面で、大統領就任前から麻薬犯の自首、投降が相次いでいるという。