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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第28回 ピカロの甘い罠 前編

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泥沼


 最初はボロ勝ちだった麻雀も、1週間も経つと毎日の稼ぎ以上も負け続けた。

「負けを取り返すなら、ポーカーゲームがいいよ。センターA(エース)のフォーカードがでると、店からご祝儀が100万円出るんだぜ」
 これまた安達が、貴仁也にささやく。

 センターAとは、ポーカーゲーム機の画面に出る5枚のカードの中央の札がエースだったら、店側からのご祝儀が出るという、『馬の鼻先に人参』的な懸賞だった。

 通常のポーカーゲームで、フォーカードが出る確率は1/400程度である。さらに、その上のロイヤルストレートフラッシュは1/2500という低い確率だ。

 センターAは、そのロイヤルストレートフラッシュより出ない設定とされている。

 タチの悪い店は負けが混んだ客に、店外に駐車したクルマからの送り(=イカサマ)でセンターAを出し、さらに客の射幸心をあおっていた。 

 若い貴仁也は貯めたカネを取り戻そうと、ますます博打の深みにはまっていった。

 そして、歌舞伎町のトイチ業者からカネを引っ張り続けた。

 歌舞伎町のトイチは、日掛け(=毎日集金をすること)が原則である。日掛けだけに、集金にきたときはキチッと払わないと多少手荒い洗礼を受ける。

 顔にキズをつけられないため、また他のトイチ業者からカネを引っ張る。何軒もの業者から借りてしまうと、これはもう自転車操業である。事実上、トイチ業者のカネが債務者間を回っているだけだった。

 二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなった貴仁也は、最後は父に頼みこんだ。

 個人事業主とはいえ、大前田接骨院は高価な治療器のローンと住宅ローンの支払いで経営は苦しかった。
 そのうえ、ムスコの貴仁也の専門学校、ムスメの高校の授業料等で、大前田家の家計は逼迫(ひっぱく)していた。

 多額の借金を抱える大前田は通常の金融業者から借り入れることはできず、ついに裏の金融業であるローンズまきかわを訪れたのである。

「わかりました。事業資金として、200万ならご融資いたしますよ。ただし、返済期日は10日間。260万円の小切手をきっていただくことが条件ですが......」

 溺れる者はワラをもすがる、という。
 大前田は後先を考えず、オレの目の前で小切手をきった。

「どうか、よろしくお願いします」
 大前田は小切手を渡し、深々と頭を下げた。

(さて、コイツをきっちり仕上げてやるか)
オレは大きなカモを目の前にして、ニヤッと笑った。

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-to be continued-   

※写真はイメージです