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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第27回 ピカロの巣立ち

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風紀


 なぜか、このまま菜摘を帰したくはないと思った。

(こんな子と結婚したいな)

 酔ったオレの脳裏に、そんな気持ちが過っていた。

 どんなムリしても、最後の最後まで付き合ってくれる菜摘。人生の良き伴侶とは、オレの臨終に立ち会って最期に見送ってくれる女だと思っている。

 この日、オレは菜摘と一夜を共にした。

「店舗は神田、社名は東京三井ファィナンス。使いたい社員は、菜摘と坂井か」
 1週間後、オレは鈴彰と最終的な打ち合わせをしていた。

「場所も社名もいいな。ただ、菜摘はダメだぞ」
 鈴彰は、ギョロっとオレを見た。

「な、なぜ......ですか」
 オレは、鈴彰に問い返した。

「基本的に、ウチは風紀(=社内恋愛)を禁止している。三井、オメェ菜摘とデキてんだろ。オメェを疑うわけじゃないが、もし男女が組んで悪さをしたら手に負えん。だから、菜摘は牧川のもとに残せ。いいな」

「は、はい」
 オレは、鈴彰の慧眼に息を呑んだ。

 このようなやり取りがあって、翌月1日にオレが代表取締役を勤める、東京三井ファイナンスは無事にオープンした。オレが希望した人材の菜摘はもちろんのこと、もう1人の坂井まで牧川の反対でローンズまきかわに残した。

 菜摘とオレは風紀関係という理由で、坂井は牧川の懐刀として必要な人材として残したいと慰留された。結局、東大卒の数間がオレの右腕として派遣されたのである。

 鈴彰とオレとの契約上の収入は、基本給が1ヶ月45万円から55万円。それに、会社が上げた純利益の10~15%が毎月の社長手当として支給される。

 必要経費は、社長権限で好きなだけ遣えた。それ以外にも多くの余禄があり、スカウトを介して女を風呂(=ソープ)に沈めたり、社の規定に沿わない客にはポケットマネーで個人的にカネを貸したりもする。

 飛ばれて損することもあったが、うまく回収すれば利益はすべてが自分の懐に入れることができる。これらを入れると、月に150万~250万円ぐらいの収入になった。

 12年前の大卒の初任給が平均19万8300円の時代、オレは毎月その10倍以上の収入を得ることになったのである。東京三井ファイナンスを開業して1年で、オレの預金通帳にはかなりの額の現金が貯まっていた。

 そんなある日、オレが鈴彰グループを去る原因となる事件が起こる。

「社長、三井社長! 明日、返済日の大前田接骨院の院長が死にました!」
 数間が、携帯を切るや否や叫んだ。

「し、死因はなんだ!」

「自殺だそうです!」

 オレは呆然として、数間の声を聞いた。

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-to be continued-   

※写真はイメージです