>  > 東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第25回 ピカロの追跡 中編 「狙われた家族」
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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第25回 ピカロの追跡 中編 「狙われた家族」

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付け馬でカネを取る


 『付け馬』とは、債務者を連れて親戚や知人友人宅まで借金を取り立てにいくことである。
 まずは、阿見と親しい親戚から順に訪問を開始した。

 阿見は不動産等の担保物件が少ないので、オレは最初から親戚からの回収を目論んでいた。 
 
 阿見の出生地は、K県の阿見市であった。
 もともとが阿見一族が支配していた土地で、阿見市には多くの阿見を名のる親族がいた。

 血縁があるか否かはわからないが、大きな病院を経営する医師や、昔からの老舗の造り酒屋などもあった。

 だが、回収は順調とはいえなかった。

 阿見の叔父と従兄弟が、それぞれ50万円づつ支払ってくれたが、他の親戚は「阿見和也とは親戚だが、借金を払う義務はない」の一辺倒だった。

「参ったなぁ。アンタの親戚って、ホント、情がねぇよなぁ......」
 オレは、サウナの休憩所で阿見にいった。

「はぁ、迷惑ばかりかけてますから......それより、1日中歩きまわって喉が渇きました。ビールを飲んでいいですか」

「なに贅沢いってやがる! 足を棒にしてテメェの借金を回収してやってるオレたちが、なんでテメェにビールを飲まさなきゃなんねぇんだよ!」
 数間が阿見を怒鳴りつけた。

「よせ、数間! 喉が渇いてるんだったら、好きなものを飲ませてやれ」
 オレは数間にいった。数間は不満そうな表情でビールを注文にいった。

「あっ、夕日ビールのウルトラドライをお願いします」
「.........」
 数間は目を吊り上げ、ジロっと阿見をにらみつけた。

「すいませんねぇ」
 阿見は笑顔でいった。

 付け馬は、ひとつ間違えると刑事罰になる。刑法でいうところの『監禁』である。
 だが、『軟禁』なら罪には問われない。 

 だから、サウナのような大勢の人がいるところに泊まり、身柄を押さえている債務者の飲食等の自由を保障するのである。
 もちろん1人の債務者に対して、2人以上は監視役がつく。行動の自由も、多少は制限させてもらう。
 これなら、ギリギリ軟禁として認められる。

 海千山千の阿見は、そのことを知っていてわがままな振る舞いをしているのである。
 オレは居直る阿見を、なんとかへこましてやろうと考えた。
 そのとき、オレの頭に閃光が瞬いた。

「阿見社長。アンタ、年ごろの娘さんいたよねぇ」
 阿見は、オレの言葉にギクリとした。

「ハハハ......オレもうっかりしていたよ。良かったよかった。これでアンタの借金は終わるよ」
「い、いや、娘は関係ないので......」
 阿見は、情けないほど狼狽(うろたえ)えている。


「よし、娘さんに払ってもらおう!」


「そ、それだけは、勘弁してください!」
 阿見は、困惑の表情でオレに訴えた。

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-to be continued-   

※写真はイメージです