「私ね、本当に大好きなの...セックス」
次に来たのは金髪で青のカラコンをしたギャル系の女の子。名前はM。美容系の通信制高校に通っているという。
「Mちゃんの趣味は?」
「アニメとか」
「どんなのが好き?」
彼女から返ってきたのは僕のまったく知らない作品のタイトルだった。
「知らないなあ。フランダースの犬とかは観ないの?」
「あ、知ってる! 観たことある!」
話が熱を帯びるにつれて彼女は次第にタメ口へと変わっていった。が、なぜだかそれも心地よく感じられる。15分はあっという間に経過した。
次に来たのはさっきまで通りでビラ配りをしていた女の子。名前はN。客が増えてきたので、彼女ひとりで僕とその隣の客2人についた。隣の男は常連らしく、Nとくだらないエロ話で盛り上がった。それを聞くともなく聞きながらビールを飲んでいると、Nがふいに僕のほうに顔を向けて話を振ってきた。
「私ね、本当に大好きなの」
「なにが?」
彼女は僕の耳元でこう囁いた。
「セックス」
「そうなんだ。見た目は清楚な感じなのにね」
「そう、清楚系ビッチなの」
Nちゃんはそう言うと、あははははと大口を開けて笑う。もしかして......と思い、それとなく訊いてみた。
「お客さんと外で会ったりすることはある?」
「ないよ」
「連絡先の交換とかは?」
「ないない! そういうのは絶対に禁止だから」
Nちゃんは頑なに否定した。
しかし、僕はその後、この店に足繁く通い、ひとりのJKと連絡先の交換とまではいかなくてもそれに近いところまでいっている。
それは実に巧妙なやりとりだった。