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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第24回 ピカロの追跡 前編

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連載第24回 ピカロの追跡 前編


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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あらすじ
三井は返済を飛びそうな客の自宅へと向かい、期日までに支払うよう容赦ない督促を行うのだが......。


「おい、コラっ! なんで、返済日の前日に連絡とれなくなるんだよぉ!」
 オレは、阿見不動産社長・阿見(あみ)和也(かずや)を怒鳴った。

 阿見は、ローンズまきかわからトサンで200万円借りている。その1回目の返済日が翌日に迫っていた。だが、会社に連絡しても、阿見とは連絡がとれなくなっていた。

 飛ばれたと思ったオレは、新入社員の数間(かずま)希(のぞみ)を連れて阿見の自宅に乗りこんでいた。

「な、なにも、家にまで踏みこんでくることないじゃないですか。まだ、返済期日まで24時間あるでしょうが......」
 資金繰りの心労からか、疲れきっている阿見は泣きだしそうな表情でいった。

「バカヤロウ! 支払日の前日に一括返済か、ジャンプ(=金利だけ支払う)するかを話し合うのは常識だろ! 連絡がとれなくなるって、どういうことだ! 借りるだけ借りといて、バックレるつもりだったのかよ!」
 怒り心頭のオレは、阿見をさらにどやしつけた。

 阿見は、悔しそうにうつむいている。
 オレは容赦なく続けた。

「アンタ、今の時点で返済はできねぇだろうが! ジャンプするにしても、60万いるんだぞ! 今日、そのカネもできてないヤツが、明日になって全額支払えるのかよ!」
 オレは阿見に、浴びせかけるようにいった。

 リビングの隣の部屋では、女房と子どもが脅えるようにオレを見ている。

「阿見社長。誰か、社長の借金を払ってくれる親戚とかいないのかね。それとも、家にカネ目のものはないのか」
 オレは、薄汚れた阿見の家の中を見回した。

 (おっ!)

 廊下をはさんだ寝室には、豪華な紫檀の仏壇が置かれている。重厚な扉には、手掘りの蓮の花が彫られていた。
 素人目に見ても、かなり高価なものだろうと思えるほど立派な仏壇だった。

(まさか、仏壇を売り飛ばすわけにはいかないからな)

 オレは、あらためて室内を見回した。

 壁には、政党まで持つ日本最大の新興宗教団体『蓮(はす)の花(はな)』の教祖・飛鳥(あすか)玄正(げんしょう)のポスターが貼られている。そして、阿見家がとっている新聞は、団体の機関紙『蓮花(れんか)新聞』だった。

 オレはこの風景を見た瞬間、不思議な違和感を感じていた。

「じゃあ、もう夜も遅いし今日は帰るよ。オレも一眠りしてから昼ごろくるよ。そのとき話し合おう」
「ホント、申し訳ありませんでした。明日、なんとかしますので......」
 阿見は、ホッとしたような表情をした。そして一瞬、ニヤッと口元に笑みが浮かべたように見えた。

「明日、忘れるなよ。おい、希。帰るぞ」
 オレは数間を促し、玄関におり靴をはいた。