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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第23回 Jリーグに群がるピカロたち 新宿ヤクザVSピカロ後編

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連載第23回 Jリーグに群がるピカロたち 新宿ヤクザVSピカロ後編


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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あらすじ
三井は倒産したスポーツグッズの債権者集会で債権を買い叩こうと画策する新宿のヤクザ・秋山省吾と対決することになった。


「おぉぉ!」
 デスクに落とされた札束を見て、債権者一同が声をあげた。

 ざっと見て、1千万円にも満たない金額だろう。
 だが、秋山の風貌とハデなパフォーマンスが、カネを実際以上に多額に見せた。
 そして、自分の請け負った債権が、このカネで少しは回収されるのでは、という気持ちが債権者の視線を熱くした。

「工藤社長には、今いる債権者に対し遺恨を残さず、新たなる出発をはたしてほしいんですわ。そのため債権者のみなさんも、ここは苦汁を飲んだ気で辛抱してやってもらえまへんやろか。必ず、工藤社長は復活しますわ。ワシが、この歌舞伎町の秋山が断言します。そのとき、また儲けさせてもらえはればえぇんちゃいます」

 今まで、秋山に露骨な態度で敵意を抱いていた債権者たちが、いつしか秋山を救世主のように仰ぎみる。

(秋山組長って、暴力だけのイケイケ武闘派ヤクザだと思っていたけど、こんな腹芸も使えるんだ。油断はできないぞ)
 オレは、意外な秋山の手腕に舌を巻いた。

「さぁ、遠慮せんと持ってってください。これだけの人数でっさかい、1人頭は負債額額面の1割にしかなりません。そのかわり、この場で支払いますわ」
 秋山が債権者相手に、買い取り価格を提示した。

「しかし、1割程度の現金をもらってもなぁ......」
 負債額1千200万円だといった会社役員風の男が、秋山に向かっていった。

「そら、アンタの言わんとすることはわかりま。ただ、今回の債権買い取りは、あくまで債権者会議を丸く収めるためのもんや。工藤社長なら、また会社を再建できますやろ。今のうちに恩を売っといて、工藤社長が大きくなったら返してもろたらえぇやないですか。今回の買い取りは、とりあえず債権者のみなさんに迫っている支払いを、一時的に逃れるための苦肉の策や。そう思うてくれまへんやろか」
 秋山の言葉は丁寧だが、相手を押しきるような迫力がある。

「か、考えさせてくれ」
 会社役員風の男は、蚊の鳴くような声でいった。

「オレたちは買い取ってもらう。手形の決済が近づいているので、背に腹は変えられん」
「ウチも頼んまっさ」
 だが、彼以外のほとんどの債権者は、秋山の債権買い取りに同意した。

「ほな、宮崎先生の前に並んでくださいや」
 秋山は、愛嬌のある笑顔でいう。

 オレは秋山の口調に、ふと違和感を感じていた。

(あれ、秋山組長は茨城県の出身と聞いているけど。債権者会議では関西弁で話してるぞ)
 容貌魁偉な風貌と、武闘派のイケイケというイメージが強く、オレは秋山が経済ヤクザでもあるという一面を知らなかったのである。

 ただ、先の占有の件では痛い目をみている。負けたままではいられない。


 オレは、秋山に挑んでいく覚悟を決めた。