この夏、日本の司法、行政、立法が試されている
2016年5月24日、ヘイトスピーチ(差別扇動表現)を違法とする、ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)が成立施行された。私は2013年頃からずっとこの法律を作ることを計算して動いてきた。感無量である。
だが、私はまだヘイトスピーチ解消法の効果を疑問視してしまう。それがなぜかというと、現在の舛添都知事辞任後の都知事選挙において、在特会前会長の桜井誠が出馬をし、ヘイトスピーチを明確にしているからである。それなのに、まことに残念ながらヘイトスピーチは野放し状態であるのだ。
先週7月14日に桜井誠候補を東京地裁に提訴しました
そのようなタイミングで本当に偶然なのだが、私事だけれども民事訴訟の件を報告させていただく。
本日、高田(桜井)誠、水谷架義、新妻眞一、藪根新一、麻生照善に対し、2014年8月15日の暴行傷害事件で東京地裁に訴状を提出しました。合わせて桜井誠に対しては同年8月16日にツイッターに書いたデマについても提訴しました。暴行傷害やデマの流布が人種差別的動機で行われた事も主張します
— 山口祐二郎 (@yamaguchiyujiro) 2016年7月14日
この事件については詳しくはこちらを参照→週刊金曜日公式サイト(リンク)
選挙中でもヘイトスピーチはOKじゃないだろう
ヘイトスピーチ解消法ができた意味はあるのかというと、今まではきちんと効果を出してきた。ヘイトスピーチ解消法施行後の6月5日には、神奈川県川崎市において民族差別を煽るデモが開催されたが、差別デモに反対をする抗議者が溢れ、警察がデモ主催者側にデモ中止を促し、中止を決断せざる得なくなった。
すでに下火となっていた人種差別団体『在特会(在日特権を許さない市民の会)』は、ヘイトスピーチ解消法施行後はさらに衰退の一途をたどっていった。今までであればヘイトスピーチをする者がいても放置する状態であった警察が、ヘイトスピーチ解消法施行後は注意するようになっていった。そうして、差別デモ、差別街宣は非常にやり辛くなったのだ。罰則規定はないのだが、しっかりとヘイトスピーチ解消法は、その名の通り結果を出したのである。
それなら選挙カーが人をはねても無罪なのか
こういったヘイトスピーチが違法なのにも関わらず垂れ流されている現状に、法務省は、東京都選挙管理委員会はどう対応をするのか。私が知る限り、実は現時点では何も対応していない。事実、都知事選挙中における桜井誠のヘイトスピーチを放ったらかしである。選挙中は抗議をすれば、下手したら選挙妨害で逮捕をされてしまう。なので多くの人々が憤っていても、抗議ができない状況である。
何のためのヘイトスピーチ解消法か。これではまるで、灯りの点かない電球、温かくない風呂、刃が付いていないヒゲ剃りではないか。焼鳥屋に鳥がないような、居酒屋に酒がないようなもんだ。
選挙中だろうがヘイトスピーチで心をえぐられる被害者には関係ない。なので、選挙中でもヘイトスピーチは取り締まるべきである。なぜかといえば、ヘイトスピーチ解消法ではヘイトスピーチを違法としているからだ。違法行為は、選挙中だろうが何だろうが駄目なのだ。どんな違法行為でもそうだ。簡単な話である。