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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第18回 ピカロの会合

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連載第18回 ピカロの会合


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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前回までのあらすじ
三井は新宿のヤクザ・秋山興業とのトラブルを乗り越え、会社内で順調に成績を伸ばし、鈴彰グループの定期総会を迎えることとなった。


「え~、それではただ今より、6月度鈴彰グループ合同朝礼総会を行います!」
 なんと、司会者はまきかわ金融の榎本菜摘が務めていた。菜摘は、アニメの声優のような声で総会の開会宣言をした。

 わが鈴彰グループは、毎月3日に全店舗が集まって朝礼総会なる決起集会を行う。全30店舗だから、1店舗5人前後は出席するので、総勢150人以上は参加する大規模なものだ。

 鈴彰グループの本部事務所は歌舞伎町にあるので、総会はそこから近い『新宿公民年金会館』を借りて行われる。100坪はあろうかという年金会館最大のホールに、ヤクザとも堅気とも見分けがつかない怪しげな風貌のピカロが、ズラッと勢揃いする光景は圧巻だ。

 さすがのオレも、会場の雰囲気に気圧されていた。これから、そこで前月の貸付高の上位3人を表彰するのである。

 オレは事前にベストスリーに入っていると、当確通知を牧川からもらっていた。150名以上いるピカロの前で表彰を受けるという光栄に、否が応にもオレの胸の鼓動が高まっていた。

(オレも、これで一人前のピカロだな)

 内心、そんな自分を誉めてやりたかった。なんといっても、先の占有事件では武闘派ヤクザの秋山興業相手に一歩も引かなかったことは、自分なりにピカロとして成長していたのだと自負している。

「それでは成績優秀者発表の前に、本月の当番店舗の社員を代表して......高田馬場、ローンズ金光の坂田麗くん。壇上におあがりください」

 成績優秀者発表の前に、当番店舗から選ばれた社員が檄を飛ばす。代表として上がったのは、オレたちが占有した物件にヤクザが突入してくる際、忽然と姿を消した坂田だった。

 菜摘は壇上から、坂田をエスコートするように招いた。

「押忍(おす)!」
 坂田は気合を入れ、肩をいからせて壇上に立った。

(アイツ、ちゃんとしゃべれるのか)
 オレは不安そうに坂田を見た。だが、それはオレの杞憂であることにすぐに気づく。

「みなさん、はじめまして。自分は、鈴彰グループの新入で、坂田麗と申します。自分は先月、ある物件の占有でモメてヤクザと渡り合いました。本当に殺されるかと思いました」

坂田は、実に饒舌であった。

「でも、自分のような若輩者でも、鈴彰グループの末席を汚す身。どんなことがあっても、この物件を手放してはいけないと気持ちを奮い立たせ、なんとか乗り切ることができました。すべては気合で決まるんだと......いい勉強をさせていただきました。これからも、鈴彰会長のため、グループのため。この命、捧げるつもりでがんばりますので、諸先輩のみなさん方。今後とも、よろしゅうお願い申し上げます」

 坂田の武勇伝に会場から万雷の拍手が鳴り響いた。

「すげぇヤツだな」
「若いのに気合が入っているな」

 オレの周囲から、ところどころで坂田を称賛する声があがる。

「.........」
 オレは茫然と、坂田のいる壇上を見あげた。坂田は、得意満面なドヤ顔で会場に笑顔を振りまく。
 オレは腹立たしさより、坂田の厚顔無恥な態度に呆れかえっていた。

 坂田はゆっくりと自席に戻った。

「それでは、これから6月度貸付ベストスリーの発表です。まずは先月の貸付額の第一位は......渋谷のロンーズ・エタニティーの鈴木卓さんです。おめでとうございます」
 菜摘は、満面の笑みで発表する。