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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第17回 ピカロVS新宿ヤクザ

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連載第17回 ピカロVS新宿ヤクザ その3


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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前回までのあらすじ
三井は新宿のヤクザ秋山興業が張り付けた警告文を無視して債務者の物件を占有しようとした。しかし、秋山興業の連中が阻止のために動き出していた。


「オラっ!」


 スキンヘッドの男のものスゴい咆哮とともに、ガシャっという乾いた音が鳴り響いた。人の頭ほどの穴が、窓ガラスにポッカリと開いている。スキンヘッドは、開いた穴を見てニヤッと笑った。その目線は、オレと坂田を見ている。


(や、ヤバそうなヤツだな)
 人を何人も殺したことのあるような殺気立った目に、正直オレは震えあがった。

「せ、先輩!大丈夫ですか。オレ、ちょっと武器になるもの探してきますよ」
 坂田は周囲を見まわし、オレを残し部屋を出た。

 その瞬間、3連発ほどガラスを叩く音が聞こえ、窓ガラスは完全に崩壊した。

「おい、テメェ!門に貼ってあった紙を読まなかったのか!」

 スキンヘッドは割れた窓ガラスをゆっくりくぐりながら、オレに向かっていった。
 すぐにサングラスの男と、若いパンチパーマの男がスキンヘッドの男の背後にまわる。

「.........」
 オレは恐怖で固まっていた。

「おい聞こえねぇのか!門に貼ってあった紙を、読んでねぇのかってきいているんだ!」
 スキンヘッドは、オレの目の前にきていった。手には、太いバールを持っている。

(あれで殴られたら助からんな)
 オレの脳裏に、"死"の一文字が過る。

「そ、そんなの貼ってなかったスよ」
 オレは、肚の底から絞りだすような声でいった。


「ナメんじゃねぇ!」


 その瞬間、スキンヘッド男の強烈なストレートがオレの顔面をとらえた。


 グキッ


という、イヤな音が耳に残る。

 オレは、まるでスローモーションのように床に転がった。

「上等だよ!テメェがシラを切るなら、徹底してきってみろよ!そのかわり、死んでも後悔するなよ」
 スキンヘッドは言い終えるや否や、倒れているオレの腹を踏みつけた。

「グフっ!」
 さらに連続して、腹を踏みつけるスキンヘッド。

 5~6発、続けて蹴られただろうか。オレの意識は、朦朧(もうろう)としていた。

「おい!テメェが、ヤマを返した相手は歌舞伎町の秋山興業だ。名前くらいは聞いたことがあんだろ。オレは組長の秋山(あきやま)昌吾((しょうご)だ。命が惜しかったら、ここからすぐ出ていけ。それで勘弁してやる!」

 オレは薄れゆく意識の中、秋山の声をきいた。


「フフっ......」


 秋山の恫喝を聞きながら、なぜかオレは笑ってしまった。

 人は絶体絶命のピンチに陥ると、思わぬ行動にでるらしい。脳内ドパーミンの作用なのか、特殊なアドレナミンが湧きだすのか。
 命知らずなオレの態度に、秋山は一瞬ひるんだようだった。

「なに笑っていやがる!テメェがナメてんじゃねぇぞ!おい、コイツを放りだせ!」
「はい!」
 サングラスの男とパンチパーマの男が、オレの足を持って引っ張った。

「うわぁ!」
 オレは大声を上げ、近くにあったテーブルにしがみついた。2人は必死でオレの両足を引っぱり続ける。

(ここを追いだされてはいけない。居座るのが仕事だ)
 占有とは、そういうものだと思っていた。

 オレがすがりついた、高価な大理石のテーブルはかなりの重さだった。

「ゴラっ!手を離さんかい!」
 秋山は、またオレの腹に蹴りをいれた。

「ゲボっ!」
 さすがにみぞおちに入った蹴りに、胃袋は悲鳴をあげ嗚咽がこみあげた。

(坂田、はやくきてくれ)

 オレは心の中で、元ヤン坂田の応援を期待した。
 だが、あれから数十分経つのに、坂田は姿すら現さない。

(武器になるものって......アイツ、逃げやがったのか)

 そんなことを思いながら、オレは秋山の蹴りに堪えていた。