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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第15回

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後輩ピカロと一枚の張り紙


「どうも、はじめまして!鈴彰グループ、ローンズ金光の坂田麗(さかた れい)です。いまだ若輩者ですが、よろしくお願い申し上げます」
 坂田は少し腰をおとし、仁義を切るような体勢で名刺を出した。

(ずいぶんカブれたヤツだな)
 オレは心の中でつぶやいた。

 スーツを着て一見パリッとしているが、顔や風貌から醸しだすピカロ特有の雰囲気は隠せない。

「どうも。まきかわ金融の三井裕二です」
 ヤンチャそうな坂田に、オレも名刺を差しだした。

「自分は入社まもないので、なにもしらないですけど、よろしくお願いします」
「いやいや、自分も入社して1ヶ月も経たないんです。こちらこそ、よろしくお願いします」
 通り一遍の挨拶を交わし、オレたちは坂田の運転するクルマで新宿御苑に向かった。

 道中、お互いに簡単な自己紹介をした。
 坂田はオレより1つ年下の20歳。

 坂田は地元では、不良少年で知らぬ者はいないほどのワルだったという。毎日のようにケンカに明け暮れ、何度か警察に逮捕されている。結局、親が手に負えないと、鈴彰に相談して働くことになったという。

 坂田は鈴彰と会って、彼の持つオーラに惹かれたのは、オレと一緒だった。
 おかげで気心も知れ、お互い気分よくクルマの中で談笑した。

「着きました」
 坂田はブレーキを踏んだ。

「古林......孝博......。うん、ここだな」
 新宿御苑近くの閑静な住宅街。白い塀に囲まれた、庭の広い豪邸がオレたちの目の前に広がった。

 五十嵐の指示では、チャイムを鳴らして誰も出てこなかったら、そのまま鍵を開けて屋敷内に居座るように命じられている。

 鉄製の門には太い鎖が巻かれ、大きく頑丈そうな鍵がつけられている。


「あっ!」


 鍵ばかりが気になって気づかなかったのだが、鍵の右斜め上には白い画用紙に赤いマジックで文字が書かれている。オレは坂田とともに、貼紙をのぞきこんだ。


「何人たりとも本物件に立ち入ることを禁止する。秋山興業、秋山昌吾......」


 坂田は、声をだして貼紙を読んだ。

「み、三井先輩!秋山興業って、新宿じゃ有名なヤクザですよね。立ち入り禁止になってますが、どうします。ねぇ、先輩!」
 さすがに、ガキのころから不良をやっていただけのことはある。

 ヤクザの代紋に、ビビッているようだった。

「どうすんだ」
 背後から声がする。振りむくと、手に工具箱を持った関内のオヤジが立っている。関内のオヤジは、口元に笑みさえ浮かべている。


「こんなの関係ねぇよ!」


 オレは、勢いよく貼紙を破りとった。

「さぁ、おやっさん。鍵を開けてくれ。玄関もだ」
 関内のオヤジに品定めされているように感じたオレは、持ち前の気丈さで思い切った行動に出た。

 今考えてみると、鈴彰グループの後輩のまえで虚勢を張りたかったのかもしれない。
 だが、このオレの行動が、人生最大の危機を呼ぶことになるとはこの時点で知る由もない。


 迫りくる危機は、一歩一歩確実に近づいていた。


tokyopica15-2.jpg

-to be continued-   

※写真はイメージです