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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第13回

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和解の条件


「う~ん。なるほどねぇ。写真週刊誌に激白か......」
弁護士の宮崎武は、オレから受け取った週刊PHOTO SHOTをジックリと呼んで、顔を上げた。
宮崎弁護士は恰幅がよく、色つきの金縁メガネをかけている。それに、弁護士には珍しいヒゲをはやしていた。

一見すると、ヤクザか弁護士かわからない。
さすが、個性豊かな鈴彰グループの顧問弁護士だけのことはある。オレは、変なことを感心していた。

「まぁ、多少強引な債権整理もしてますし、メディアまでカラんできたので、用心のために先生のお力を借りようと思いまして......」
オレは、宮崎弁護士に向かっていった。

「書類は?」
「これです」
オレは、すばやく書類を差し出した。

宮崎弁護士は、書類をジッと検分している。

「委任状、譲渡書......みんな、白紙でもらったのか?」
宮崎弁護士は、横柄な口調で訊いた。

「あ、はい」
オレは不安そうに答えた。

「困るんだよねぇ、勝手に書類を捏造したら......下手にやると、刑事事件にまで発展するんだよ。まぁ、鈴彰さんのところだし、なんとか動いてみましょう」
宮崎弁護士は、ずいぶん値打ちをつけていった。

「キミたちにわかっているかどうかわからないが、こういう事件は弁護士まで捕まるケースもあるんだ。毎月の顧問料をもらっているだけじゃ、ワリにあわないんだよなぁ~」
宮崎は、自分は有名なのでヤバい仕事は引き受けたくない、というような素振りだった。

テレビで見る強面(こわもて)の風貌にしては饒舌でおもしろく、明朗快活な親しみやすい弁護士の姿は、そこにはなかった。

「も、もちろん、必要経費はかかった分だけ支払うと、牧川の方から聞いております。先生、なにとぞよろしくお願いします」
オレは泣きだしそうな表情で、深々と頭を下げた。

「まぁ、そこまでいうなら小松崎と折衝してみるよ」
「あ、ありがとうございます!」
オレはフロアに頭がつくかと思うほど、前屈してさらに深く頭を下げた。顔を上げると、今までとは違った満足そうな表情の宮崎がいた。


(チッ、悪徳弁護士め)


面従腹背、オレは腹の中でツバを吐きかけてやりたいような気持だった。

結局、宮崎弁護士のおかげかどうかはわからないが、小松崎との話し合いはすんなりと終わった。
小松崎愛は残債を全額支払うことで話がつき、宝物であるフェラーリモンディアル8を取り戻したのである。

もちろん穏便にすますため、トサンの金利を除く元金だけの一括返済であったが。
ただ、クルマの引き渡したあと、小さな問題が起こった。


「ワタシの大切な鬼帝(キテイ)のぬいぐるみがない」


小松崎愛が大切にしている、鬼帝のぬいぐるみが車内から消えていたのである。

これは、オレが内緒で持ち出したのだ。
もともとオレは、小松崎愛の大ファンである。
そこまで愛ちゃんが大事にしているものとはつゆ知らず、そのぬいぐるみを持ち帰って部屋に飾っていたのだ。

宮崎弁護士がいうには、クルマにあったものすべてを返却するのが調停の条件であるという。
もし、ぬいぐるみを返さないなら、オレたちを窃盗罪で訴えるとまでいいだした。
オレは仕方なく、薄汚れた鬼帝のぬいぐるみを返した。

「愛ちゃん、ただいま」
部屋に戻ると、今まであったぬいぐるみがない。

ポカンと空いた空間には、債権整理で盗みだした小松崎愛のブルマ姿の写真だけが貼られていた。
「あぁ、鬼帝は返したんだっけ......」

 一陣の風が吹いたような、なんともいえない寂寥感がオレの心を埋めつくした。

tokyopica13-2.jpg

-to be continued-   

※写真はイメージです