──あと、食べ物と飲み物も前田さんから直接メールでアドバイスを受けているとのことで......
前田 あぁ、やってる、やってる。
──このやり取りは、ずっと続いているんですか?
前田 初めはショートメールでガンガンやり取りして、一通り伝えたんで、後はどれだけそれを守れるかですね。
──なるほど、それを実践してるかどうかということですね。それは、Ryo選手が特に前田さんに求めてきたんですか?
前田 あのね、教えるって難しくてね、"求める奴"じゃないと入らないんですよ。彼は求めてきたから、教えたんですよ。求めてこない奴にいくらアドバイスしても難しい。
──いつ頃から、求められるようになったんですか?
前田 去年の初めくらいからですね。実際にアドバイスし始めたのは、去年の秋が終わったくらいからです。技術的なアドバイスした時に、Ryoは理解できるんですよ。なんでかって言うと、自分の中で"積み上げ"があるから。「あれはどうやってやるのかな?」って、自分の中でああでもないこうでもないって考えてるんですよね。だから、一言を与えてやればわかるんですよ。簡単なワンポイントアドバイスみたいなことしかしないんだけど、わからない奴にはわからないんですよ。「わかった」って言っても試合の中で出てこないし、試合で使えないんですよ。
──Ryo選手はその段階まで来ているから、求めてきたのかもしれないですね。
前田 たぶんね。自分の中でジレンマもあったんでしょう。年も食ってくるし、この辺で喝入れて、もうそろそろプロで上位と当たってガンガンやって行かないと。
──で、今回Ryo選手と対戦する加藤貴大選手なんですが、かつてRyo選手が加藤選手の所属するBRAVEジム(代表・宮田和幸)に出稽古で来て、手合わせをしたことがあるらしいです。その時は、Ryo選手にガンガン極められたとのことなんですが、その経緯を踏まえてマッチメイクされたんですか?
前田 いや、全然踏まえてはないんだけど、でもゆるいマッチメイクはしたくないんですよ。過去にガンガン極められたことのある相手と今になって闘えば、本当に正しい努力をしてきたのかわかるじゃないですか。
──当時より進歩してるかが、わかりやすいですよね。過去にやられたことのある先輩と闘うというのは、心境として苦手意識が先行するのか、「リベンジしたい」という気持ちが先行するのか分かれてくると思うのですが......
前田 でもね、「手合わせした」って練習ででしょ? 日本の総合格闘技でダメなのは、マッチメイクしてやっても「こいつとは自分の周りの誰かがスパーリングしたことあるな」って、聞いて情報を掴む。そんなのカンニングと同じでね、世界に出てマッチメイクされると、相手はどんな奴かわからないんですよ。で、映像観たらすごい場面ばっかりで、びびるんですよ。「こんなんとやって勝てるの? やりたくないなぁ......」って。でも、そういうのとやっていかなきゃいけないんですよ。そうでしょ?
──リングスの頃なんか、いきなり得体の知れないロシア人相手でしたからね(笑)。
前田 初期は毎月ですからね。かと言って、無茶苦茶なマッチメイクをするつもりはないんですよ。ないんだけど、やっぱり拮抗していないとね。
(PART2へ続く)
寺西ジャジューカ。1978年生まれ。テレビ業界とライター業界を行き来する毎日。ブライアン・ジョーンズとビートたけしと前田日明と大江慎也を敬愛している。Facebook:寺西ジャジューカ